在外邦人は印鑑証明の代わりに「サイン証明書」を取得
相続人が日本に住所を有しない場合、印鑑登録証明書は発行されません。前述した事例でも、海外生活の長い母は印鑑登録証明書が発行されないでしょう。
このような場合、在外邦人は現地の日本領事館でサインが本人自身のものであるというサイン証明書を取得することができます。
日本領事館で、係員の面前で関係書類に署名・栂印をし、サイン証明書と関係書類をつづり合わせて割り印をもらいましょう。
米国の場合は公証人でも作成してもらえます。住所を証明する在留証明書も現地日本領事館で取得することができます(米国では公証人も作成可)。
権利承継…対抗要件を備えなければならない
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分等を超える部分については、登記・登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができません。
相続によって取得した海外不動産の登記方法
実際に遺産分割が成立し、相続人が不動産を相続した場合、登記等でその権利関係を明確にしておく必要があります。
この場合、法の適用に関する通則法13条1項は「動産または不動産に関する物件及びその他の登記をすべき権利は、その目的物の所在地法による」と定めています。
本事例では、韓国の不動産は韓国法の、米国の不動産は米国法の登記法によって登記をしなくてはなりません。
海外資産の相続税…国籍・住所によって異なる
海外の財産に相続税がかかるかどうかは、被相続人や相続人の国籍・住所によって異なります。以下の2点のいずれかに当てはまる場合は相続税の納税義務が発生します。
・相続が発生したとき日本にいないが、過去10年以内に被相続人または相続人が日本に住んでいた場合
ここで、海外ですでに相続税のような税金を支払った場合、日本で相続税が課されると二重課税となってしまうため、海外と国内の二重課税を防ぐための外国税額控除があります。
外国税額控除とは、被相続人の財産が海外にあり、その財産について外国で相続税のような税金を支払った場合は日本での税額が控除される制度のことです。
以下のいずれか少ない金額を相続税から控除することができます。
・日本の相続税額×国外財産の価額÷相続財産の総額
まとめ
・海外に所在する不動産の登記は所在地の法律による
・外国税額控除を利用することで二重課税を防ぐことができる
大槻 卓也
行政書士法人ストレート 代表行政書士
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