ビビる大木氏は40歳を過ぎてから「お笑い中間管理職」という意識が生まれてきたという。70代、60代の先輩芸人は元気である。年下の後輩芸人たちは自分を追い越していこうとする。どうしたら芸能界で生き残れるのか。ビビる大木氏が焦りのなかで惹かれた渋沢栄一の言葉とは。

渋沢の教え「時期を待つという勇気も必要だ」

先輩たちがこのまま元気にテレビで活躍されていると、やはり後輩芸人である僕たちは少し焦り気味になります。「46歳で出番が来ない!」ということを、僕でも感じるときがあります。「出番が回って来ることは、もうないかもね」という気持ちになるときもあります。

 

そこで、悩むわけです。

 

「じゃあ、どう生きていこうか」、40代の苦しみです。自分の人生の方向、道をどう軌道修正していったらいいのか、考え始めます。先輩芸人たちより先に、後輩芸人たちが自分の行く道、歩く道を変えていくことになるわけです。

 

ですから、僕たちと同世代の中には、急に小説を書いてみたり、映画を撮ってみたり、ドラマの脚本を書いてみたり、あるいはドラマに出演したりと、それぞれが必死になって、自分の道を探し始めています。

 

お笑い芸人に対しての自分自身の諦めもあるのかもしれません。このまま芸人でいても、自分がたけしさん、タモリさん、さんまさん、鶴瓶さんになれるわけではないという諦めです。「だったら、どうやって生きていこうか」と思い悩む人が多いのです。

 

ですから気分は、「進まない自転車をこぎ続ける僕たちの葛藤!?」というツブヤキになります。僕でも深刻に悩むことはありますが、だからといってすぐに新しい方向を探るほど恵まれた才能を持っていません。悩んでいろいろと考えますが、行動は何もしていません。どこかで、僕の妻の口癖である「何とかなるよ!」という思いがあるからです。

 

そして、渋沢さんも僕に、「時期を待つという勇気も必要だ」と教えてくれるからです。若い頃は貪欲ですから、チャンスがあったら、人と争ってでもそれをつかみとろうとしました。しかし、渋沢さんは僕に教えてくれました。チャンスを気長に待つという勇気も世の中を渡っていくには必要な胆力だと。

 

世の中には、「こうすればこうなる」という原因と結果があり、それを無視してすでにある事情が原因となって結果が生じてしまっているのに、突然横から現れて形勢を変えようとすると、そこには無理が生まれる。無理は周りの方たちにご迷惑をかけて、結果として信頼をなくすことが多々あるもの。

 

だから、時期を気長に待つ心のゆとり、あるいは愚鈍さが必要だと言ってくれるのです。さらに、渋沢さんは「走り出す前によく考えよ」という言葉もプレゼントしてくれました。

 

ありがとうございます!

 

ビビる大木

 

 

※本連載は、ビビる大木氏の著書『ビビる大木、渋沢栄一を語る』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

ビビる大木、渋沢栄一を語る

ビビる大木、渋沢栄一を語る

ビビる 大木

プレジデント社

歴史好き芸人・ビビる大木が、 同郷の偉人・渋沢栄一の遺した言葉を紐解く! 「はじめまして、こんばんみ! 大物先輩芸人と大勢の後輩芸人の狭間で揺れる40代『お笑い中間管理職』の僕。芸人としてこれからどうやって生き…

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