「急激な視力低下」から考えられる「怖い病気」とは?
■「ちょっと様子見」が失明に繋がる…即受診すべき「網膜中心動脈閉塞症」
A. 「視力が急に落ちる」という病気は、いくつか考えられます。まずはすぐに治療を要する危険度の高いものから説明しましょう。
Q. 「危険度が高い」ということは、失明の可能性もあるのですか。
A. はい、すぐに治療を開始しないと視力を失ってしまうのが、網膜の動脈が詰まってしまう「網膜中心動脈閉塞症(もうまくちゅうしんどうみゃくへいそくしょう)」というものです。動脈が詰まってしまうと、細胞に必要な酸素や栄養が途絶えてしまうので、短時間で失明に至ります。
そのため「急に見えなくなった」と感じたら半日以内、可能な限り早めに治療しなければなりません。「ちょっと様子を見よう」とする人が少なからずいますが、すぐに眼科を受診してください。特に「高血圧」「動脈硬化」を抱えている人、喫煙習慣のある人は血管が詰まりやすいので注意してください。
また、患者数では網膜の動脈よりも静脈が詰まるケースが多いです。でも、たとえ詰まったのが静脈だったとしても重症の場合、放っておくと短期間で視力が低下して回復が難しくなり、低下した視力が戻らなくなります。いずれにしても「視力が急に落ちた」と感じたら、早期の受診が必要です。
■「網膜剥離」が起きている患者さんも多い
Q. ほかにも失明の可能性がある病気はなんでしょう。
A. 頻度として多いのは「網膜剥離」です。近年では、手術法などが進歩したおかげで、失明に至る可能性はかなり低くなっています。でも、網膜がはがれているのに、長い間そのままにしておくと、視力の回復が難しくなるケースが少なくありません。
はがれた網膜は感度が落ちるため、はがれた部分の視野が見えなくなったり、網膜の中心にある「黄斑部」にまで剥離が広がると、急激に視力が低下したりします【図表】。

また網膜剥離は、まだ初期の段階に糸くずが浮いて見える「飛蚊症」の症状が急激に悪化したり、稲妻のように一瞬ピカッと光が見えたりする「光視症」が現れることもありますが、このような前ぶれがまったくなく、急に見えなくなることもあります。
■頭痛、吐き気など「目以外の症状」が現れる病気も…
A. ほかにも、患者数は多くありませんが、「急性緑内障発作」は早期に発見して適切な治療をしないと、一晩であっという間に失明してしまう可能性がある病気です(【⇒関連記事:目がかすむ、ぼやける…失明リスクもある「実は怖い症状」】)。急性緑内障発作では、目の中を循環している水分の出口が詰まり、眼圧が急上昇します。
自覚できる主な症状が「視力低下」以外に「頭痛」「吐き気」など、脳の疾患と間違われやすいため、救急外来で脳に異常がないとわかると、そのまま「様子を見る」人が多いのですが、すぐに眼科を受診しなければいけません。
Q. こうした急激な視力の低下以外に、なんとなく見えづらいと感じるときはどうすればいいでしょうか。
A. 「なんとなく見えづらい」と感じるときは、ドライアイや近視が進行した場合、そして初期の白内障や加齢黄斑変性、慢性の緑内障の可能性も考えられます。
<急激に視力が落ちたら…>
●急な視力の低下は失明の可能性が高いため「おかしいな?」と思ったら「一晩、様子を見よう」などと思わず、すぐに眼科を受診。
梶原 一人
眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック 院長
【関連記事】
税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
年収600万円「家賃20万円タワマン暮らし」の36歳男性…住まいに関する「2つの悩み」
夫婦合わせて収入「月48万円」だが…日本人の「平均的な暮らしぶり」の厳しい現実
恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】