前回は、電力システム改革(小売りの自由化)で何が起こるのかを説明しました。今回は、電力システム改革が事業者、消費者に及ぼす具体的な影響を見ていきます。

政府が掲げた3つの改革方針とは?

改革への流れの始まりは、電気事業制度改革です。高コスト構造の是正に向けて、1995年度以降、4回にわたって、発電部門での競争原理の導入や小売り部門での自由化が進められてきました。これによって、大規模なオフィスビル・店舗や工場など大口需要者に関してはすでに小売りが自由化されています。

 

電力システム改革はこの流れを受けて、2015年度から2020年度までをめどに取り組まれているものです。2013年4月に閣議決定された「電力システムに関する改革方針」では、次のような3つの目的と3つの柱を掲げています。3つの目的とは、

 

 ①安定供給を確保する

 ②電気料金を最大限抑制する 

 ③需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する

 

というものです。安定供給という電力供給の生命線は維持しながらも、全国10電力会社による地域独占体制にメスを入れ、規制緩和を図ろう、という趣旨です。この規制緩和に向けて掲げる3つの柱は、

 

 ①広域系統運用の拡大

 ②小売りおよび発電の全面自由化 

 ③法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保

 

というものです。電力システム改革は柱として掲げるこの3つのことを、段階を追って実施していくというものです。

 

第一段階は広域系統運用の拡大に向けて運用機関を設立するというものです。この段階はすでに完了済みで、2015年4月には運用機関として電力広域的運営推進機関が設立されました。広域系統運用とはまさに、先ほどの電力融通です。「同時同量」という原則に基づく電力の需給バランスを、広域エリアで確保することです。

 

電力広域的運営推進機関はその広域系統運用の拡大に向けて、必要な業務に取り組んでいきます。電力会社など各電気事業者は、この推進機関の会員になることが義務付けられています。

 

第二段階が、先ほどから話題にしている電気の小売業への参入の全面自由化です。大口需要者止まりだった小売り自由化を、小規模なオフィスビル・店舗や家庭など小口需要者にまで広げていくものです。

「小売りの自由化」で電力業界の地図は変わるか?

小売りが自由化されると、新規参入が認められます。需要者はそれらの会社も含めて、多様な選択肢の中から電気を買う先を選ぶことができるようになります。裏を返せば、供給者間に競争関係が生じるということです。

 

第三段階は送配電部門の中立性の一層の確保や電気の小売料金の全面自由化です。何やら難しそうですが、簡単に言えば、小売り全面自由化で期待される料金引き下げを実現するために欠かせない2つの措置です。

 

一つは、送配電ネットワークを適正な対価を支払ったうえでだれもが自由・公平・平等に利用できるようにするため、送配電部門を発電・小売り部門と切り離し、中立性を持たせようというものです。送配電事業の「法的分離」とも呼ばれています。

 

もう一つは、電力の小売り全面自由化後も経過措置として残る電気料金への規制を、国が一定の条件の下で電力会社の供給区域ごとに解除できるようにするものです。自由化後も残る規制料金がその段階でなくなり、以降、電気事業者は自由料金で競争を繰り広げるようになるわけです。

 

これらのことを定めた改正電気事業法は2015年6月に成立しています。改正法の柱である送配電事業の「法的分離」は、2020年4月に実施される予定です。6年間にわたる電力システム改革は、予定されたステップをそこで踏み終えることになります。これら一連のシステム改革によって、電力市場は民間に開放され、電気事業者など各種プレイヤーは競争原理の中で事業を展開していくことになるはずです。

 

電気事業者の中で特定規模電気事業者(PPS)と呼ばれる、電力の小売り自由化を受けて市場に参入してきた事業者は2015年8月現在、734社にものぼっています。

 

迎え撃つ形になる電力会社は、通信会社や共通ポイント運営会社などと連携することで、消費者に対してお得感を訴える戦略を見せています。

本連載は、2015年10月28日刊行の書籍『「マンション経営」よりラクで、確実に儲かる!太陽光発電投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「マンション経営」よりラクで、確実に儲かる! 太陽光発電投資

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松田 貴道

幻冬舎メディアコンサルティング

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