常識にとらわれない方法で「発電量」を確保
前回からの続きです。
もう一つは、太陽電池パネルの設置の仕方に工夫を凝らすものです。太陽電池パネルを設置する場合、発電効率が最もいいとされるのは、真南に向けて傾斜角30度で設置するというものです。しかし、この方法にも弱点があります。傾斜角30度で立ち上げると、架台のコストがかさむという点です。
風の影響を受けやすくなるので、耐風圧性能をそれなりに高める必要が生じるからです。しかも、北側に設置する太陽電池パネルに影を落とさないように、間に一定の距離を開ける必要が生じますから、スペースを消費してしまいます。そこで、傾斜角をもう少し小さくできないか、検討します。
傾斜角を小さくすれば、架台のコストは抑えられ、影の出方が小さくなりますから、北側に設置するパネルとの間の距離をもう少し縮めることができるようになります。土地の使用効率が上がり、太陽電池パネルをもっと増やせます。
一方で、傾斜角は最適と言われる30度ではなくなるので、発電効率が下がる可能性はあります。ただしその低下率は、傾斜角10度当たり2%程度と言われています。つまり、傾斜角を20度に抑えても、発電効率は2%程度下がるだけです。
設置場所の条件や太陽電池パネルの設置費用・発電効率によっては、傾斜角を30度より小さめに設定したほうがかえって投資効率が上がるということは十分に考えられるのです。同じ土地に太陽電池パネルを傾斜角10度で設置する場合、同20度で設置する場合、同30度で設置する場合、この3つのケースを比較してみましょう。
太陽電池パネル4段で一つの列を構成する前提で試算します。傾斜角10度であれば、列前後の間隔は約2mで済みます。これをある土地に並べると、出力250Wの太陽電池モジュールが4000枚敷き詰められます。年間発電量の見込みは100万kWhを超えます。傾斜角20度ではどうでしょうか。この場合には、列前後の間隔は約3・5m必要になります。
その結果、この土地の上に並べられる太陽電池モジュールの枚数は3552枚に減ります。年間発電量の見込みは95万7000kWh強です。これが、最適と言われる傾斜角30度では、どうでしょうか。この場合には、列前後の間隔を約5mは確保する必要が生じます。
その結果、この土地の上に並べられる太陽電池モジュールの枚数は3216枚と、さらに減ってしまいます。年間発電量の見込みも、モジュール1枚当たりの発電効率は最も高いはずなのに、90万kWhを割ってしまいます。太陽電池モジュールの枚数が増えれば、それだけ初期投資額はかさみます。1枚当たりの単価は2万円程度ですから、傾斜角10度の場合と30度の場合との差分である784枚に相当する金額は、1600万円程度です。
一方、傾斜角10度の場合と30度の場合とでは、年間発電量の見込みで15万kWh程度の差が生じる計算です。この15万kWhは売電収入に置き換えれば、29.16円/kW×15万kWh=437万4000円と計算できます。したがって、初期投資額の差分は4年で回収できるわけです。
これなら、傾斜角を10度に抑えてより多くの太陽電池パネルを並べたほうが有利です。このように常識にとらわれずに、発電量の確保に向けて工夫に努める姿勢が求められます。
投資期間20年、太陽光発電投資の「安定性」とは?
10年後、いま進められている電力システム改革が何をもたらすか、もっとはっきり分かっているでしょう。しかし一方で、太陽光発電投資の生みの親とも言える固定価格買取制度がそこまで続いているかは分かりません。エネルギー市場の今後の動向は流動的ではありますが、それを見定めている時間の余裕はないのです。
太陽光発電投資に乗り出すのであれば、早いに越したことはありません。考えてみれば、投資期間20年というのは、けっこうな長さです。これだけ長い期間になれば、時々の経済環境の変化もならされてしまうので、継続できている限りはどのような投資手段でも安定的と言えるのかもしれません。
しかしそれでも、太陽光発電投資に及ばないことは確かです。固定価格買取制度によって一度決められた売電価格が向こう20年間にわたって変わらないということは、それだけ希少なことです。その希少価値を、少しでも早く太陽光発電投資を手掛けることで、手に入れてほしいと思います。
投資は通常、時機を選びます。タイミングの見極めによって成否を分けるとも言えます。それも、投資の難しさの一つです。ところが太陽光発電投資は、その見極めを必要としない稀有な存在です。
やるのであれば、「いま」しかないのです。「政策の波」は、決してあなたの決断を待ってくれません。