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地元を去り行く女性を顧みない政策に人口の未来なし
筆者が講演会等で、「10年単位でみて都道府県のTFR高低と都道府県の出生数増減の相関はない。関係があるのは女性の転出超過数である。それくらい人流が激化している」と繰り返し伝えているが、未だ自治体によっては理解が進んでいない、もしくは、少子化対策としてこれまで取り組んできたことと大きな変化が伴う政策変更への拒否感が強い、といった状況が見られている。
少子化対策を司るある自治体での担当課が「子育て支援話ではなく、女性の県外への転出対策といった話ならば、担当業務外である」との認識であったというような話も仄聞する。
戦略、すなわちゴールを見失い、戦術に溺れる(流される)、とはまさにこのようなことであろう。
このような人口動態のエビデンスに基づかない政策に固執してしまう背景にあるのは、若い女性の県外流出、そして時代変化等への感度の低さである。
子育て支援、不妊治療、ひとり親施策といった、「既婚または婚歴あり男女への政策」は、それ自体は有効な施策ではあるものの、それらは全て「地元に残ってくれる人を対象」とした政策である。
残ってくれない人のことは考えない、という政策のベースには、「自分たちのエリアが持っているこれまでの家族や労働価値観を頑なに変えない・変えたくない・変える気がない」「地元を選んでくれない人は視野にいれなくとも良い」というような社会的風潮が感じられる。
筆者の他のレポートでも繰り返し指摘しているが、統計的に見れば若い女性が去り行くトレンドのエリアに人口増加の未来はない。
今回の四半世紀出生数減少率ランキングは、「若い女性人口を集める東京都の人口の未来は明るい結果となった」ことを我々に示しており、それは少子化対策に欠けている「人流の視点」をあらためて念押ししたものと言えるだろう。
天野 馨南子
ニッセイ基礎研究所
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