遺産分割協議がまとまらないときは
遺産分割協議がもめてしまってまとまらないとき、話し合いすらできない状態のときは家庭裁判所に「遺産分割の調停」あるいは「遺産分割の審判」を申し立てることができます。
調停では家事審判員や調査委員の立ち会いをもとに、相続人が集まって話し合いをし、譲歩と合意を目指します。
家事審判官や調査委員はアドバイスをしてくれますが、結論は当事者が決定し、調停が成立します。調停成立後、相手方が結論に従わないときは強制執行が可能です。
調停の申し立ては、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に以下の書類を提出します。
■調停の申し立てに必要な書類
・申立書
・当事者等目録
・被相続人の除籍謄本・改製原戸籍謄本など(相続人によって異なる)
・相続人全員の戸籍謄本・住民票
・遺産に関する書類(遺産目録・不動産登記事項証明書・限定資産評価証明書・預貯金の残高証明書等)
審判では分割方法が強制的に命じられる
審判は家庭裁判所に委ねられます。裁判所が事実調べ・証拠調べを行い、家事審判官によって分割が命じられます。申し立ては被相続人の住所地の家庭裁判所に行います。
審判による分割方法が不服な場合は、2週間以内に高等裁判所に即時抗告をして争うこともできます。
いきなり審判を申し立てることもできますが、調停に回されることが多く、調停が不成立(不調)となった場合は自動的に審判に移行します。
遺産分割のやり直しは可能なのか?
いったん有効に成立した遺産分割協議について、相続人全員の合意が得られた場合は後からやり直すことが認められます。
遺産分割協議全体をやり直すことも、一部の相続財産に関する遺産分割協議のみをやり直すことも可能です。
さらに、成立したはずの遺産分割協議が後から無効になったり、取り消されたりする場合がある点には注意しましょう。
まず、遺産分割協議が無効になる場合として、相続人全員が遺産分割協議に参加していない場合が挙げられます。
遺産分割協議は相続人全員が参加しなければならず、一部の相続人が参加していない遺産分割協議は無効となるのでやり直さなければなりません。
ただし、被相続人の配偶者と子による遺産分割協議の成立後、子の認知が生じて相続人が追加されることになった場合は、遺産分割協議をやり直す必要はありません。
このとき、認知された子は他の相続人に相続分相当の金銭の支払いを請求できるに留まります。
遺産分割協議の成立後、新たな相続財産が見つかった場合も遺産分割協議を全てやり直す必要はなく、その財産についてのみ、新たに遺産分割を行うことができます。
なお、遺産分割協議は、相続人全員の意思を合致させて相続財産を配分するという性質の行為であるため、契約などと同様に錯誤や詐欺に基づく取り消しによって、遺産分割協議の効力が否定される場合があることにも注意が必要です。
まとめ
・相続人のうち1人でも不参加だと遺産分割協議は成り立たない
・遺産分割協議書の作成は義務ではないがトラブル回避や名義変更の際に必要なので作成するのが望ましい
・遺産分割協議がまとまらないときは家庭裁判所に「遺産分割の調停」あるいは「遺産分割の審判」を申し立てる
大槻 卓也
行政書士法人ストレート 代表行政書士
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