しかし!国際私法に従った手順を踏めば日本法の適用も
しかし、国際私法の同条2項第1号には、「被相続人が遺言に適用される方法によって明示的に居所がある国の法律を指定するときは、その国の法律を適用する。」と規定されています。
そして、日本の「法の適用に関する通則法」の41条は、当事者の本国法によるべき場合に、その本国法に従えば日本法によるべきときには、日本法が適用されることを定めています。いわゆる「反致」といわれるものです。
つまり、在日韓国人の場合は、この49条2項1号により、遺言書に「相続は日本法による」と記載し、亡くなられるまで日本で住まれていた場合には、原則、通則法36条を適用して韓国法が適用され、韓国でも国際私法49条1項で韓国法が適用されますが、同条2項1号により、遺言で居住地国である日本法を選択しておくと、日本法が適用されることになり、その結果、通則法41条の規定で、日本法を適用することになります。
このように、在日韓国人の場合には、遺言に記載することにより、韓国と日本、どちらの民法でも自由に選択できることになります。ですので、まずは、どちらの民法を適用するのかを決める必要があります。
そして、それを決めようとすると、それぞれの民法を知って、違いも理解して、ご自身や残されたご家族にとってどちらの方法が有利になるかを考えながら選択することになります。
なぜなら、適用する民法によって、法定相続人も法定相続分も遺留分も異なるからです。
■まとめ
今回は相続に適用する準拠法について説明しました。
国籍が異なると適用される民法も異なり、複数の国が絡むと非常に複雑になります。相続の手続きはどの国の法律を適用するのか、準拠法を判断するところからすすめていくことになります。
相続に備え、どちらの民法を選択すればよいか分からない場合には、専門家に相談されることをお勧めします。
親泊 伸明/しんぱく のぶあき
日本経営ウィル税理士法人 顧問税理士