米利上げ観測とオミクロン株で弱含んだ豪ドル相場
2021年10月末には1豪ドル=0.75米ドル台(85円台)まで回復が進んだ豪ドル相場ですが、足元では1豪ドル=0.70米ドル近辺(80円近辺)まで弱含んでいます[図3]。
11月以降の豪ドル安の要因として、
②世界的なオミクロン株感染拡大への警戒感の高まり
が挙げられます。
タカ派的と捉えられたパウエル議長の議会証言
まず、米国で利上げ観測が高まるきっかけとなったのは、11月30日に行われた米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の議会証言(上院銀行委員会)でした。
パウエル議長は議会証言において高インフレを「一時的」とする表現を事実上撤回し、テーパリング(量的緩和縮小)の加速を進める方針を示唆しました。市場ではパウエル議長の発言が「タカ派的」と捉えられ、FRBによる早期の利上げへの連想が働いたと考えられます。
依然として根強い豪州の利上げ観測
もっとも、金利先物市場では、米国だけでなく豪州の利上げ観測も依然として根強い状態にあります。直近の金利先物には、2023年にかけて米国や英国を上回る豪州の利上げ期待が織り込まれています[図4]。
また、日本やユーロ圏では2023年にかけてマイナス金利の継続が見込まれており、今後は主要国の中でも金融政策の方向性の違いが顕在化する可能性が高そうです。
市場のエコノミストの間では、RBAは2023年1~3月に利上げに転じるとの見方が大勢であり、豪州の利上げ観測は引き続き豪ドル相場の下支え要因となりそうです。
オミクロン株は臨床研究の行方に注目集まる
一方、オミクロン株に関しては、南アフリカを中心に感染が急拡大しているものの、現時点では豪州をはじめ先進国での感染は限定的に留まっています[図5]。
また、既存ワクチンの有効性やオミクロン株感染による重症度などについては症例の少なさから不明な点も多く、今後の各国による臨床研究の行方に注目が集まります。
今後、オミクロン株の特性に関する解析やワクチン開発が進み、市場の不透明感が解消に向かえば、センチメント改善により豪ドル相場が見直される可能性もありそうです。
和泉 祐一
フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社
シニアリサーチアナリスト
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