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原油価格の動きは、世界経済におけるインフレ率、金融政策、株価等に影響を及ぼすことから、各国も極めて重要な問題として注視しています。しかしなぜ、産油国は複数あるのに、原油価格は絶妙な高値でほぼ安定推移しているのでしょうか。その理由と、暴落の可能性について、経済評論家の塚崎公義氏が平易に解説します。

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    【初心者向け】暴落のメカニズム「囚人のジレンマ」

    カルテルの参加者は、カルテル破りをするインセンティブを持っています。これを説明するのが、以下のような表を使って説明される「囚人のジレンマ」という理論です。

     

     

    Aは考えます。「Bが約束を守るかどうかわからないが、仮にBが約束を守るとした場合、わが国はどうすべきだろう。約束を破るべきだ。守れば儲かるが、破れば大儲けできるのだから」。

     

    Aはさらに考えます。「仮にBが約束を破った場合、わが国はどうすべきだろう。約束を破るべきだ。守れば損するが、破れば損せずに済むのだから」。

     

    Aは結論に達します。「Bが約束を守るかどうかわからないが、Bが約束を守る場合でも破る場合でも、わが国は約束を破った方が得だ。悩む必要はない。約束を破ろう」というわけですね。

     

    B社も、まったく同じ事を考えるので、約束を破ります。結局、カルテルは簡単に破られてしまうので、うまく行かないのです。

    繰り返しのカルテルなら守られるかも

    さて、これまで1回限りのカルテルについて考えてきましたが、AとBのカルテルは、毎日結ぶことが可能です。そのときに両社が考えるのは、どんなことでしょうか。どちらかが賢ければ、こういうでしょう。

     

    「私は、今日はカルテルの約束を守る。そして、あなたが約束を守るかどうかを見る」

     

    「あなたが約束を守れば、私は明日もカルテルを結ぶ。あなたが約束を破れば、私は明日からはカルテルを結ばずに増産して安売りをする」

     

    それを聞いたライバルは、こう考えるはずです。

     

    「今日だけの事を考えたら、約束を破った方が得だ。しかし、そうすると明日から相手も安売りをするので、明日からは利益ゼロが続く」

     

    「今日、約束を守れば、明日からも利益が続く」「長期的な利益を考えれば、約束を守った方が得だ」

     

    したがって、1回限りのゲームの場合とくらべると、繰り返しのカルテルのほうが守られる可能性は高いといえるでしょう。それでも、過去の産油国のカルテルはあまり守られてきませんでした。参加国が多いから、ということもあるのでしょうね。

     

    今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

     

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    塚崎 公義
    経済評論家

     

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