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供給曲線が「右肩下がり」になる可能性も否定できない
産油国によっては、財政支出を賄うために必要な金額が決まっているため、原油価格が下落すると大量の原油を売る必要が出てくるかもしれません。そうした国は「原油価格が下がれば下がるほど供給を増やす」ので、価格を一層押し下げる力として働きかねないわけです。
そうした産油国が多ければ、原油価格が一度下落をはじめたことで際限なく下落していく可能性も出てくるわけですね。
経済学用語でいえば、通常、供給曲線は右上がり(価格が上がるほど売り注文が増える状況)なのですが、そうではなく右下がりとなっているため、「需要曲線と供給曲線の交点で価格が決まる」といわれても、交点が「逃げ水」のように右下方向に逃げて行ってしまう、というわけですね。
一般消費者の行動も「投機」に…!?
実際の生産量以外にも、投機が価格に与える影響も大きいので要注意です。カルテルが崩れるという思惑は、投機家の売り注文を増やすため、価格が暴落する可能性を大いに高めるかもしれません。
もうひとつ考えるべきなのは「投機家以外にも投機をしている人が大勢いる」ということです。石油会社は、原油価格の上昇を見込んで原油を多めに確保しているかもしれません。そうした会社は、原油価格の下落が予想されるようになると、多めに確保してある在庫が減るまで原油の仕入れをしないかもしれません。
一般消費者も「投機」をしているかもしれません。「ガソリン価格が値上がりしそうだからガソリンを満タンにしている」という人です。そうした人は、ガソリン価格が暴落したら安心してガソリンを買わなくなるかもしれません。そうなると、「原油価格が暴落すると原油の需要が減る」のです。
「フル生産に見合う需要量」があるか否かが重要
もっとも、原油価格の暴落を期待しすぎるべきではありません。カルテルが無事に維持されるかもしれませんし、仮にカルテルが崩壊して産油国がフル生産したとしても、原油の需要がそれ以上に大きければ、原油価格は高止まりしかねないからです。
筆者は原油の需給状況についてくわしくありませんが、世界の景気が回復していることから、需要が大きいかもしれないですし、「石炭が足りないから原油で発電する」という企業があるかもしれません。
温暖化ガスへの風当たりが強く、化石燃料の先行きが暗いため、たとえば新しい炭鉱が開発されず、石炭生産量が減少していれば、原油の需要が増えるかもしれませんし、石炭生産が先細りになると思われれば、投機家は長期的な原油不足を予想して原油の買いに走るかもしれないわけですね。
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