今回は、企業の業績が悪いにもかかわらず、株価が上昇する理由などを見ていきます。※本連載は、IFTA国際検定テクニカルアナリストとして活躍する福永博之氏の著書、『ど素人が読める株価チャートの本』(翔泳社)の中から一部を抜粋し、「テクニカル分析」の基礎知識と分析方法を紹介します。

決算には「良い数字」と「悪い数字」が混ざっている

業績が良くても売られて値下がりする株がある一方で、業績が悪くても上昇する株もあります。今回、例として取り上げるのは東京急行電鉄です。

 

東京急行電鉄は2015年5月13日に2016年3月期の連結経常利益が13.5%減になると発表しました。また経常利益が前の期に比べて減益になるのは6年ぶりのことだったようです。

 

一方、純利益は土地の売却益で7%の増益、売上高は1%増、営業利益は9%減となりました。このように各項目の結果がばらばらで、良いものと悪いものが混ざっている場合、判断に迷います。

 

純利益の増益などは土地売却益といった一時的な要因によるものだと考えれば、どちらかというと悪い予想の方が多いと考えられるわけですが、実際の値動きはどうなっているのでしょうか。チャートをみてみましょう。

 

[図表]東京急行電鉄(9005)の日足チャート

 

決算発表のあと売られて下落するどころか、徐々に株価が上昇しているのがわかります。

チャート分析で「自分以外の投資家」の思考を読む

このように株価は業績予想とは連動せずに動くことがあるのです。仮にこの結果を受け、翌営業日に、下落する前に売ってしまおうと、売却注文を出してしまっていたら、その後の株価の上昇による値上がり益を得られずに後悔していたことでしょう。

 

ただ逆に、この業績結果をみて、ファンダメンタル分析を理由にここで買おうと考えられる一般の投資家がどれだけいるのでしょうか。

 

こうした値動きをよく「悪材料出尽くし」であるとか、「企業の見通しが控え目過ぎ」で、実績はもっと良くなるはずだ、というような表現で説明されることがありますが、ど素人にはこれらの数字だけをみて、最終的な売買判断は難しいと考えるのは私だけではないはずです。

 

そこで業績結果から、自分以外の投資家がどのように判断しているのかを教えてくれるのがチャート分析なのです。

 

今回の東京急行電鉄のケースでは、減益決算が発表されても株価が大きく下落せず、徐々に安値が切り上がっています。買いか、売りか、自分では判断が難しい状況でもこうした値動きをみれば、いわゆる悪材料出尽くしとなり、他の投資家が買っていることが分かり、売ってはいけない、あるいは売るのはちょっと待った方が良いと判断できるわけです。

ど素人が読める 株価チャートの本

ど素人が読める 株価チャートの本

福永 博之

翔泳社

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