長く座ると「がん死亡率が高まる」…考えられる理由
もう1つ大きな問題は、自宅で座ったままの生活を続けていると、運動不足に陥ることと、がんを含めた病気のリスクが上がる可能性があることです。
アメリカのテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究が、約8000人に加速度計を装着してもらい、連続する7日間にわたって座っている時間と身体を動かしている時間を詳しく調べました。
その結果、肥満や喫煙などのリスクファクターを調整しても、長く座っている人にがん死亡率が多いことが明らかになりました。
がん死亡率が増えるメカニズムについては、まだよくわかっていませんが、長時間座り続けることで血流が悪化し、筋肉の代謝の低下や、ホルモンバランスの変化など、複数の要因が関係しているといわれています。
ちなみに、座りすぎによる健康リスクを帳消しにするには、1日に60分以上の運動が必要といわれています。
先のMDアンダーソンがんセンターの研究では、座っている時間30分を、ウォーキングなどの軽度な運動に置き換えれば発がんリスクを8%下げることができ、さらに中度の運動に置き換えれば31%ものリスク低下につながるとしています。
中川 恵一
東京大学大学院 医学系研究科 特任教授