前回は、節税のための不動産の組み換え術について説明しました。今回は、被相続人が生きているうちに「遺産分割協議」を行うべき理由を見ていきます。

「もめる」ケースが多い遺産分割

相続税は、財産を持つ人が他界し、相続人が他界した人(被相続人)から財産を譲り受けた場合に、相続人に対して発生します。一方、相続人・被相続人ともに「どう対処すると家族皆にとって幸せなのか」と考えるのが、「遺産分割協議」です。

 

この遺産分割協議は被相続人が生きている間に行ってもいいのですが、亡くなった後に行うケースも多いものです。後者の場合は、遺言書があれば、その内容を前提に協議することになるでしょう。

 

ところで、ここ数年、この遺産分割での事件の受理件数が増えています。調停と審判の合計件数は、10年前までは1万件程度であったものが、2010年代に入り1万3500件前後で推移(最高裁判所「司法統計年報(家事事件編)」より)しています。

 

このことは、相続において、相続税の問題以前に遺産分割そのものでもめているケースも多いということを示しています。ですから、相続税の負担をどう減らすかといったことを考える前に、遺産分割でもめないようにしておくことが、家族皆で幸せになるには大切だということもできます。

 

通常、被相続人の他界の後、7日以内に死亡届を提出し、遺言の有無を確認して3カ月以内には相続の放棄などを確認して相続人が確定します。そして、被相続人の他界から4カ月以内に被相続人の所得税の申告と納付を済ませ、相続財産の評価を行って遺産分割協議書を作成し、被相続人の他界から10カ月以内に相続税の申告と納付となります。

 

ですから、実態として遺産分割協議書は被相続人の他界から半年後をめどに話し合って作成するものですが、もっと早い段階で正式な協議書ではなくとも、家族で話し合い、実際に分けていくことをおすすめします。

相続不動産は共有せず、単独所有が基本!?

実態として、相続時の財産は前述のとおり土地が多いはずで、その分割については、以前述べた資産の組み替えを被相続人の生前から積極的に行うことができます。資産の組み替えによって、生前に相続人に対して財産を渡してしまうわけです。

 

その際は、「共有」という資産の渡し方は絶対に避けるべきです。配偶者と三人の子がいて、ある不動産を別の不動産へ組み替えるのであれば、4カ所の不動産に組み替えるのが最も効果的な手法です。

 

私のところに相続問題で相談に来る人の多くが、不動産を共有にしたためにもめ事を起こしてしまっています。相続前に皆で相談して不動産鑑定士の意見を聞きながら共有をやめてそれぞれが単独所有にすべきです。不動産の数があまりなく、共有にした場合でも、元気なうちに被相続人が遺言書の中で「相続後共有財産を遅滞なく市場で売却し現金で分ける」等の具体的な内容を決めておくべきだと思います。

 

そのうえで補足的に加えるとすれば、生命保険を使って生前贈与を積極的に実施しておくのもよいでしょう。たとえば、子が父を被保険者とする死亡保険に加入し、父が他界した場合に死亡保険金を受け取るという方法です。

 

流れとしては、まず、父が子に現金を生前贈与し、子は贈与された現金で「契約者は子、被保険者は父、死亡受取人は子」となる生命保険に加入します。こうした形態の保険の場合、死亡保険金は子の一時所得になります。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『塩漬けになった不動産を優良資産に変える方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

相馬 耕三

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、買ったはいいものの収益を生んでいない賃貸物件や、地価の暴落でほったらかしになっている土地を抱える不動産オーナーは多くいます。ソニー生命の不動産整備などを実現してきた経験豊富な不動産コンサルタント…

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