前回は、不動産の「所有」から「利用」への移行が相続対策になる理由を説明しました。今回は、「財産を使い切る」という発想の必要性について見ていきます。

節税策ばかりに気を取られるのは時間のムダ!?

私は税務の専門家ではないので、個別の税制の活用について語る立場にはありません。ですから、たとえば相続税をはじめ他の税金についても、「納めるべきものはきちんと納めるべきだ」と考えています。

 

日本で暮らす以上、日本人である以上、日本の社会が決めたことを守るのが筋だと考えているのです。そのことが、本書で税制のことについて深入りしない理由のひとつでもあります。税制がどうなるから節税策としてはこれがよい……などと、日本の社会として決めたことに小賢しく策を弄して対策を練るのは、時間のムダとさえ感じているのです。

 

もちろん、相続税の節税策として、贈与での2000万円の配偶者控除を活用したり、住宅所得資金の贈与の非課税枠を活用したり、相続時精算課税の選択や教育資金1500万円の一括信託贈与の非課税枠を活用したり、さらに土地活用では小規模宅地等の評価通達の特例を活用したりなど、様々な節税策があることは私自身もよく理解しているつもりです。

 

ただ、そうした節税策だけに考えをめぐらせ、思い悩み、時間を取られるのはムダなことだと考えているだけです。そこに時間を取られ、思い悩むくらいなら、積極的に生前から贈与していくべきではないでしょうか。

 

再度強調しますが「財産を使い切る」という発想を持つべきです。人生の後半では、不動産をはじめとした資産をできるだけ有効に生かして使い、人生を楽しみ、そして、もし残った財産があったのであれば、それを相続する。そのときは、そのときの税法に則って税額を計算し、相続人にきちんと納税してもらう。その対応だけでよいのではないでしょうか。

楽しく生きるために有効活用できない不動産はない

あと、何十年か人生があるはずなのに、いまの税制について一喜一憂するのは本質的なことではないように思うのです。ただし、いま多くの人が抱えている負担、また負担に思うその気持ちを、後世に継がせるようなことはすべきではありません。

 

そのために大切なことは負担を感じないように前向きに不動産をはじめとした資産を使いこなし、楽しく生きる道を選択することなのです。そのとき、不動産はこれまでは「売るに売れない、処分できない」と思っていたものでも、最大の武器となります。

 

錆び付いて抜けないと思っていた刀が、鞘から抜いてみると、伝家の宝刀といえるようなものに変わっていくのです。

 

将来を楽しく生きるために、有効に活用できない不動産はありません。まさに、不動産を所有から利用に変えていく。その発想の転換が大事なのです。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『塩漬けになった不動産を優良資産に変える方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

相馬 耕三

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、買ったはいいものの収益を生んでいない賃貸物件や、地価の暴落でほったらかしになっている土地を抱える不動産オーナーは多くいます。ソニー生命の不動産整備などを実現してきた経験豊富な不動産コンサルタント…

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