権力集中を強める習政権の「死角」…党内不統一を憶測させる、一連の事象 ※写真はイメージです/PIXTA

2022年開催予定の第20回党大会(20大)に向け、習近平氏の国家主席3期目続投が確実視されている。対外的にも権力集中の姿勢を隠さない習氏だが、その一方で、党内の思想統一を疑わせるような事象も散見されている。権力者たちの水面下の駆け引きを探る。

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党中央が発出した「党組織処理規定(試行)」の中身

党中央は3月に「党組織処理規定(試行)」を発出し、その第7条で問題が深刻(厳重)で組織処理の対象となる17の行為を列挙したが、そのなかで「重大な原則上の問題で党中央と一致せず、“4つの意識”、“4つの自信”、“2つの擁護”に反する誤った言動」を第1に挙げたことは、習氏が完全には党内を掌握していないことの裏返しと言える。

 

4月、党中央は普通高等学校(大学に相当)の「基層組織工作条例」を修正し、学内党組織の機能強化、党務や政治思想活動専担要員、指導員を教師・学生数の各々1%以上、0.5%以上とすること、各院・学部毎に少なくとも1〜2名の専担組織員を置くことなどを盛り込み、大学も特別扱いしない姿勢を鮮明にした。

 

6月、党中央紀律委直属の紀検監察学院李永忠副院長が2013年に人民網人民論壇に発表した「中国人民に自由に発言(放言)する共同の機会を享有させる」と題する文章が、突然ほぼ同時に30近くの地方の官製サイトに掲載され(図表1)、その後削除される一方、中国有力サイトの1つである網易が同文章を掲載するという奇妙な現象もみられた。

 

同文章は胡耀邦の長男である胡徳平氏の著作「改革放言録」を紹介しつつ、「放言は人類社会の普遍的価値で、憲法が保障する公民権利。個人が放言することは個人がリスクを持つこと、それを禁止すれば為政者が危険を持つことを歴史は証明している」などとした敏感な内容を含む。これら動きは、表面上の習氏への権力集中にもかかわらず、実は党内の思想は統一されていないとの見方を裏付けるものではないか。

 

(注)文章のタイトルと再掲載日(2021年6月9日)が赤くマークされている。 (出所)2021年6月、海外華字各誌が本件を報道した際に掲載
[図表1]過去の「放言機会享有」文章が再びネットに (注)文章のタイトルと再掲載日(2021年6月9日)が赤くマークされている。
(出所)2021年6月、海外華字各誌が本件を報道した際に掲載

 

6月末、党中央は「党を全面的かつ厳格に統治(厳治)することに関する習近平論述抜粋2021年版」を出版。そのなかで、「厳治が進む中で、党内に一種の雑音、騒音が生じている。“過去5年間、党の集中統一を強調し過ぎた。今後重心を党内民主に移すべき”というおかしな議論をする者がいる。これは政治的に混乱し人を欺く議論。なにか別の下心がある、あるいは自身が清廉でないことを示すもの」(注1)、「役人が上からの書面の指示を待つだけで、自ら積極的に仕事をしない」(注2)が収録された。前者は初めて公開されたようで、なぜこの段階でわざわざこの発言を出してきたのかという疑問がある。

 

(注1)2018年1月党紀律委での習発言。同年3月全人代で憲法修正し国家主席任期制限撤廃を模索していた時期。

 

(注2)2021年1月の習講話。

 

後者については、党中央が2019年発出した「党下級組織や党員は重要事項について、上の指示を仰ぎ許可を得ること」とした条例との関係がある。条例は習政権が汚職腐敗摘発、役人の責任を問う制度(問責制)強化を通じて党内統治の強化を進める一環で出されたものだが、その結果、「2つの擁護」貫徹なども相まって、多くの役人がリスクをとらず、なにもしなくなったと言われている。問題が習政権の権力集中に起因するだけにやっかいと言える。

 

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1976年、大蔵省入省。1990年、アジア開発銀行理事代理、2000年、香港理工大学中国商業センター客員研究員。2003年、アジア開発銀行研究所総務部長、2006年以降、財務省神戸税関長、財務省財務総合政策研究所次長、財務省大臣官房政策評価審議官、2010年から大和総研常務理事等の要職を歴任。2015〜21年、香港の日本ウェルス(NWB)独立取締役。一橋大学卒。香港中文大学普通話課程修了。

著者紹介

連載中国第20回党大会に向けての政治シナリオ

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