習李対立の真相は「役割分担」?
昨年来、李克強首相の言動が習氏と異なることが注目されている。最近の例では、6月に全人代常務委が可決した「データセキュリティ法」は、習氏の「誰であれ、データを掌握する者が主導権を握る」との考えの下、国家がデータの管理を集中的に行う方針を打ち出したが、李氏の本音はイノベーション誘因を高める観点から、データの収集・処理について、私企業により大きな自主性を付与すべきというものと言われる。
7月、李氏率いる国務院常務会議で2020年中央予算や財政支出、国有資産管理の点検が行われた際、李氏は机を叩き怒りの表情で、「悪質な大口取引商品(大宗商品)の転売や脱税がみられるが、国務院が専門調査チームを立ち上げ徹底的に取り締まる」と発言したことが政府サイトに掲載された。
公共資金に関わるこうした問題が大きく取り上げられることは稀で、違法な大宗商品取引となると一般人とは考え難いこと、党紀律委ではなく国務院調査チームが取り締まるとされたこと、党関係サイトは李発言を取り上げなかったことから、ここでも党の内部抗争の一端がみえる。
9月、党中央機関誌人民日報は1面右下で李氏が世界自然保護大会開会式に出席したことを同氏の写真入りで報道したが、そのすぐ上に「原則を堅持し、勇敢に闘争せよ(堅持原則、敢于闘争)」を大文字にして、習氏が中央党校若手幹部を対象に行った講話を紹介し、習思想を徹底的に学習することを論じた記事を掲載(図表2)。
「人民日報は記事の配置に細心の注意を払っている」として官製報道の微妙な変化に注目する一部筋は、「まるで李氏の頭をハンマーで叩けと言っているようだ」とした。2020年来、李氏関連の記事が人民日報1面に掲載されることは稀で、例えば20年10月1日、李氏が出席した会議の報道は2面、21年同日は同じ年会議の記事が3面、同13日の李氏報道は4面だった。こうした首相の「降格」扱いは異例とされる。
ただ、李氏は2023年全人代での任期満了に向け(注3)、経済が悪化した場合に経済担当として全責任を負わされないよう、自分の意見は習氏と異なることを時々示して保険をかけているだけ、あるいは、中国の伝統劇(京劇)の顔を赤く塗った正義役(紅脸)と白く塗った悪役(白脸)のように、(どちらがどちらかは別にして)習氏と李氏が意図的に異なる発言をして役割分担をしているだけ(唱紅脸、唱白脸)との冷めた見方が多いことも事実だ(図表3)。
(注3)国家主席任期制限を撤廃した2018年憲法修正の際、首相の任期を2期までとする87条規定は撤廃されず。
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