温家宝氏への「いやがらせ」?
党内事情を占う観点から、7月1日の党百周年祝賀行事に姿をみせるか、特に注目されたのは江沢民、朱鎔基、胡錦濤、温家宝の4氏だったが、胡、温両氏のみ確認された。実況中継した中央電視台(CCTV)が冒頭、指導層が天安門城楼に登壇する際、名前を読み上げたのは習氏をはじめとする現常務委員、王岐山国家副主席、胡氏で、その他は「老同志」だった。江、朱両氏の欠席は習氏に対する不満の表れとみる向きもあるが、それ以上に高齢(各々95歳、93歳)による健康上の理由が大きいだろう。
天安門城楼の胡氏は無表情で体調が思わしくない様子だったが、習氏が2度にわたり丁重に胡氏に先を譲る(礼譲)様は、かつて両氏が協力して江氏に対峙していた関係の復活かと注目された。3月末〜4月初、「自分の心の中では、中国は公平と正義に満ちた国家であるべき」などとした澳門(マカオ)導報の連載がネットから削除されたことで注目された温氏は(図表4)、城楼で目立たず悲痛な表情で、まるで葬式に参列しているようだったと評された。映像にあまり映らず、序列の関係もあろうが、党中央が温氏を尊重していない表れなどと憶測された。
ネット上に流出した写真では、温氏の背後に失脚した薄熙来元重慶書記の弟である薄熙成氏に似た人物が写っており、一部で習氏の温氏に対するいやがらせかと話題になった(注4)。なお温氏の連載は、澳門導報というマイナーで国内誌か海外誌か微妙な媒体を選んだことからして、党中央から問題視されることを回避しつつ、習政権を批判しようとしたことは明らかだ。
(注4)護衛官の1人だった可能性が高い。流出した当日の配車リストでは、祝賀行事に多くの「紅二代」と呼ばれるかつての指導層の子孫が招待され、薄熙成氏もその1人だったが、序列的に城楼に登壇する資格はない。温氏は現役時、薄熙来氏の進める毛沢東時代を彷彿とさせる「革命歌を歌う(唱紅)運動」に反対し、同氏失脚を主導したと言われている。
次回最終回は、20大に向けての政治シナリオを考える。
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