
コロナ禍、「おうち時間」の増加で家具や家電など、インテリアにこだわる人は増加傾向にありますが、「本当に自分らしい空間」作りの真髄はどこにあるのでしょうか。本記事では、ライフスタイルショップ「SEMPRE SESIGN」代表取締役会長である田村昌紀氏が、理想的で豊かなライフスタイルについて紹介していきます。
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「エレガンス」とは原点的な美しさのこと

「エレガンスかどうか」という視点を、僕はとても大切にしている。
多くの人たちは「エレガンス」と聞くと、なにかドレッシーな、ハレの場の形容詞のようなニュアンスを感じているようだ。近寄り難いものを感じる人もいるかもしれない。
僕にとってのエレガンスは、「美」そのものを指す言葉だ。さらにいえば、「原点的な美しさ」と翻訳してもいいかもしれない。エレガンスというのは、個人的な好みを超えた、普遍的なものだと思う。
「エレガンス」の対極にあるのが「アグリー」だ。アグリーなものを集積してしまっては美しくないし、心地よさも生まれないだろう。
人間の生き方にも、美は大きく関わってくる。
一例を挙げると、「美意識が許さない」という表現がある。例えば合理性、利便性だけを追い求めて出来上がったものに対して「この商品は便利かもしれないけど、美意識が許さない」という評価を下す。あるいは、義理を欠いた付き合いについて僕は「それは僕の美意識が許さない」と表現することもある。
ビジネスの世界では往々にして、美の観点が後回しにされがちだ。そのことを僕は残念に思っている。ものも空間も、本来、美しくなければならない。美を欠いたものは居心地が悪い。特に暮らしの分野のデザインに携わっていると、その思いは強くなる。
人間が人間らしく生きるために、色、質感、形、素材、すべての要素が「美」の基準になる。それらがなめらかに調和したとき、心地よさにつながっていく。この調和こそがすべての人に通ずる「エレガンス」なのかもしれない。