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家は単なる「箱」ではなく、人生を作る「居場所」
家は、単なる「箱」ではなくて、その人を表す「居場所」だ。
それはハウスというより、ホームと呼んだほうがふさわしいだろう。なぜならそれは、心の帰る場所という意味も含んでいるからだ。
なかでもリビングルームは、住まう人にとっての生活の中心地であり、家そのものだと考えていいと思う。英語の「リビング(Living)」には、「生きる」という意味がある。その場所でくつろいでいるとき、僕たちは人生を味わっているのだと思う。
風を感じられるような開放的なリビングルームには、テラスで過ごす午後のような安らぎがある。あるいは、コージーなリビングルームも魅力的だ。そこにはテーブルを囲んで語らいたくなるような穏やかさがある。
人が集まる空間を手がけるときに、著者が最も大切にしているのが「くつろぎの調和」だ。
例えば、色、素材、光、映像、フォルム、デザイン。それぞれのエレメントを組み合わせ、馴染ませながらバランスをはかっていく。どれかひとつが突出しても意味がない。すべてがしっとりと調和したとき、空間に品格が生まれてくる。その空間に身を置くことで、人は生きる力を取り戻していく。
著者は、暮らしは美しくなければいけないと思っている。
美しいものを見て、触れて、感じる。そのおかげで精神的にバランスのとれた美しさが養われる。これこそが、品格のある暮らしだと思う。
鏡は視覚的空間を広げ、絵画は人の内面を深めていく
鏡は、住まいを考えるうえで大切なアイテムのひとつだと思う。
ためしに、大きな姿見を部屋の奥に置いてみる。鏡の中に室内が映り込み、まるで部屋の奥にもうひとつの空間があるかのように感じられる。
もしも部屋の奥が暗くても、鏡を入れることで手前の光を映し、明るく感じられる。
空間にたったひとつしか窓がなくても、鏡に外の景色が映れば、もうひとつの窓の役目を果たしてくれる。スペースの限られた店舗や採光の足りない空間で鏡張りの壁が用いられるのは、こんな効果があるからなのだ。
鏡といえば、こんな楽しみ方もある。僕らは、手持ちのアートに合わせてフレームを制作するサービスを行っているのだが、数十種類の材から選ぶのは、ゲストだけでなく、僕らもわくわくする時間だ。ぴったりと合ったフレームが選ばれると、作品の魅力が立ち上がってくる。このフレームに鏡を入れるという手もある。
絵画のようにフレーミングされた鏡は美しく存在感がある。フレームつきの鏡を、絵画と対にして飾るのも面白い。
あるいは、小さな鏡とアートをいくつか組み合わせて、壁一面に飾ってもいい。作品と作品の間の空気を、小さな鏡がリズミカルにとりもってくれて、空間に調和が生まれる。
もうひとつ著者がすすめたいのは、円形の鏡だ。丸くやわらかな鏡面は、たっぷりと厚みがあって、月のようでも、あるいは凍った湖のようでもある。それを壁に掛けると室内にモダンな空気が生まれ、空間の広がりが生まれる。
それだけではない。鏡には、刻々と移ろう景色が映り込む。早朝の日差し、窓の外の緑、夕焼け空、夜の闇。部屋のなかにいながら、自然を感じることができる。
そういえば江戸時代には、七夕になるとたらいに水を張り、そこに写った星空を楽しむ風習があったという。鏡越しの風物を楽しむのも、そんな面白みがある。こんなふうに自然を楽しみながら暮らしている人に、著者は知性とエレガンスを感じるのだ。
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