「反省はするけれど、後悔はしない」
よく事を通じて、勤勉であっても、目的通りに事の運ばぬばあいがある。これはその機のいまだ熟せず、その時のいまだ到らぬのであるから、ますます勇気を鼓して忍耐しなければならない。
【『渋沢栄一訓言集』処事と接物】
■我慢もまた器量である
新しい価値観ががんがん日本に入ってきた時代が、明治時代でした。渋沢さんは新しい価値観が入ってきた明治という時代を、よく理解されていたのだろうと思います。求められるのは、切り替えだと思います。渋沢さんは新しい価値観への順応力がとても高かった方だったと言えます。
時代が変わり、徳川幕府はなくなってしまいました。暮らしている僕たちの生活は変わらないけれど、何か世の中が変わったと察して、渋沢さんは考えて行動されていたと思います。渋沢さんのすごいところは、多少不愉快なこと、思い通りにいかないことがあっても、耐えること、我慢することを知っていたということです。
だから、渋沢さんは適材適所ができたとも言えます。
ジョン万次郎さんもそうでした。明治時代を先取りした彼は、時至るまで、その場でできることを120%努力しました。アメリカでは航海士になるために、寝る間も惜しんで勉強しました。望郷の念を押し殺し、目先の現実と向き合いました。その姿勢があったので、アメリカにおいても彼は人から信頼されたと思います。
■「反省はするが、後悔はしない」
実は、ビビる大木の座右の銘はいくつかありますが、その一つに「反省はするけれど、後悔はしない」というのがあります。
僕もまた当然ですが、失敗をしたり、悪いことをしたら反省というよりも猛省するタイプです。ただし、後悔ばかりしていると、その出来事を引きずったまま前に進むことができなくなりますので、後悔の念に蓋をして我慢して、抱え込んで前に進んでいきます。
僕は昭和49年生まれですが、その前後に生まれた方たちは、学生時代にバブルが崩壊し、社会に出る頃には景気がだんだん、だんだん下降気味になっていた時期でした。給料は上がらずに、キャリアだけ重ねてきたわけで、あとから入って来た社員たちのほうが、給料がよかったりしませんか。そんな経験を、みなさんもされているはずです。
つまり、恵まれていない社会環境の中で、僕たちは社会人になりました。僕はたまたま自由業を選択しましたが、会社に勤めていらっしゃる方は本当に大変だろうと思います。その意味で、僕たちの世代は、同世代の方とお会いすると、「今踏ん張って行こうじゃないか。僕たちの世代、いい思いをしたことはないけれど、僕たちだって、何もしてないわけはない」という気持ちで、耐えながら生きています。
ビビる大木