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調査件数大幅減少だが1件当たりの追徴税額は増加
令和2事務年度に国税庁が行った所得税の調査等において、違法性があるものは27万9,000件。申告漏れ所得金額の合計は5,577億円で、1件当たり、1,480万円です。追徴税額は732億円にものぼり、1件当たり275万円となっています。
国税庁は「無申告は、申告納税制度の下で⾃発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなる」として、調査体制を強化中です。新型コロナウイルスの影響によって実地調査※が困難な今納税者宅等に臨場することなく、文書や電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正する簡易な接触による調査を実施しています。
その結果、所得税務申告者に対する調査件数は、2,993件と、前事務年度の7,328件より大きく数を減らしましたが、1件当たりの申告漏れ金額は2,565万円と前年の2,160万円となり、1件当たりの追徴課税額は292万円(前事務年度222万円)となりました。
また、消費税無申告者に対しても同様の傾向がみられ、3,294件と、前事務年度の 8,329件より大きく数を減らしましたが、1件当たりの追徴課税額は227万円(前事務年度192万円)となっています。
申告漏れ所得⾦額が⾼額な業種に大きな変化
同調査で公表された『事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得⾦額が⾼額な上位10業種』によると、上位10業種に大きな変化が見られました。まずは、令和2事務年度と令和元事務年度の上位10業種を見ていきましょう。
■令和2事務年度 事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得⾦額が⾼額な上位10業種
1位 プログラマー…1件当たりの申告漏れ金額4,927万円・追徴課税716万円
2位 畜産農業(肉用牛)…1件当たりの申告漏れ金額3,515万円・追徴課税503万円
3位 内科医…1件当たりの申告漏れ金額3,339万円・追徴課税805万円
4位 キャバクラ…1件当たりの申告漏れ金額2,834万円・追徴課税864万円
5位 太陽光発電…1件当たりの申告漏れ金額2,603万円・追徴課税825万円
6位 建築士…1件当たりの申告漏れ金額2,325万円・追徴課税624万円
7位 経営コンサルタント…1件当たりの申告漏れ金額2,268万円・追徴課税477万円
8位 小売業・犬…1件当たりの申告漏れ金額2,051万円・追徴課税456万円
9位 不動産代理仲介…1件当たりの申告漏れ金額1,804万円・追徴課税614万円
10位 商工業デザイナー…1件当たりの申告漏れ金額1,759万円・追徴課税389万円
出所:令和2事務年度 所得税及び消費税調査等の状況
■令和元事務年度 事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得⾦額が⾼額な上位10業種
1位 風俗業…1件当たりの申告漏れ金額3,373万円・追徴課税1,053万円
2位 経営コンサルタント…1件当たりの申告漏れ金額3,321万円・追徴課税1,354万円
3位 キャバクラ…1件当たりの申告漏れ金額2,873万円・追徴課税822万円
4位 太陽光発電…1件当たりの申告漏れ金額1,718万円・追徴課税294万円
5位 システムエンジニア…1件当たりの申告漏れ金額1,280万円・追徴課税190万円
6位 土木工事…1件当たりの申告漏れ金額1,225万円・追徴課税185万円
7位 ダンプ運送…1件当たりの申告漏れ金額1,212万円・追徴課税179万円
8位 タイル工事…1件当たりの申告漏れ金額1,197万円・追徴課税177万円
9位 冷暖房設備工事…1件当たりの申告漏れ金額1,187万円・追徴課税199万円
10位 清掃業…1件当たりの申告漏れ金額1,182万円・追徴課税158万円
出所:令和元事務年度 所得税及び消費税調査等の状況
新型コロナウイルスの影響で実地調査などが行いにくくなり、悪質な申告漏れや高額な申告漏れが見込まれる案件を優先した結果、順位に大きな変化が見られました。
経営コンサルタントや太陽光発電、キャバクラなどの業種は例年申告漏れ所得金額が高い傾向にありますが、プログラマーや畜産産業(肉用牛)など、例年は上位20業種にも出てこない業種が多くなっています。また1件当たりの申告漏れ所得⾦額も大きく増加しています。
自発的に適正な納税を行っている納税者との公平性を保つためにも、厳正な調査を実施が求められています。
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