「やっと自由だ」夢の地方移住…5ヵ月後、娘が見た「異変」
東京都内で40年以上会社員として働いてきた山本健一さん(仮名・75歳)は、退職金1,400万円を手に、地方の海沿いの町へ移住しました。中古の一戸建てを850万円で購入。年金は月15万円。住宅ローンはありません。
「都会はもう疲れたよ。海が見える場所で、のんびり暮らすんだ」
そう語る父の姿は、どこか誇らしげだったと、長女の由美さん(仮名・48歳)は振り返ります。
移住から5ヵ月後。久しぶりに父を訪ねた由美さんは、玄関先で立ち止まりました。庭は草が伸び放題。ポストにはチラシが溜まり、室内はひんやりと暗い。
「お父さん、電気つけないの?」
「昼間はもったいないだろ」
台所には、賞味期限の切れた総菜とインスタント麺の箱。冷蔵庫には牛乳と漬物だけ。車はあるものの、「最近はあまり運転していない」と言います。
「病院は?」
「遠いんだよ。車で40分。まあ、まだ平気だ」
健一さんは「家賃がないから安心」と考えていました。しかし、実際の生活費は予想よりもかさんでいました。
総務省『家計調査(2024年)』によると、高齢単身無職世帯の平均消費支出は月約14.9万円。一方、平均可処分所得は月約12.1万円です。特に地方では、車の維持費や暖房費が都市部より高くなるケースもあります。
「ガソリン代も上がってるし、冬は灯油が高い。思ったより出費があるんだ」
健一さんはそう言いながらも、詳細な家計簿はつけていませんでした。由美さんが最も不安を感じたのは、お金よりも“孤立”でした。
「近所の人とは話してるの?」
「いや、あまり。みんな昔からの知り合い同士みたいでな」
地域コミュニティに溶け込めず、医療機関も遠い。
「もし倒れたら、誰が気づくの?」
由美さんの問いに、健一さんは少し黙りました。
