「貯金はない」と言っていた母だが…
都内在住の会社員・真由美さん(仮名・47歳)は、母・和子さん(享年78)のことを「堅実で質素な人」だと思っていました。
築45年の市営団地。エレベーターのない4階。家具は40年以上使い続けたものばかり。外食も旅行もほとんどせず、年金月17万円で慎ましく暮らしていました。
「お金なんて、たいして残ってないわよ。葬式代くらいかしらね」
生前、母はそう笑っていたといいます。
母の死後、真由美さんは団地の部屋を整理していました。通帳には、普通預金が約80万円。定期預金は解約済みで残高ゼロ。想像どおりの金額でした。
ところが、押し入れの古い裁縫箱の底から、小さな銀色の鍵が出てきます。
「これ、何の鍵…?」
番号札のようなプレートには、都市銀行の支店名が刻まれていました。
「もしかして、貸金庫?」
銀行に問い合わせると、確かに貸金庫の契約は存在していました。ただし、相続人全員の同意書や戸籍関係書類が必要だと説明されます。
金融庁の指針により、貸金庫は原則として契約者本人のみが開閉可能。死亡後は厳格な相続手続きが求められます。
真由美さんは兄と協力し、1ヵ月後にようやく貸金庫を開けました。
中にあったのは――
●古い株券数枚
●地方銀行の定期預金証書
●そして、現金の束
合計は約1,200万円。
「どうして……?」
驚きはそれだけではありませんでした。
証書の一部は既に解約済み。だが、その解約金の行方が分からなかったのです。通帳にも入金履歴はありません。
銀行に照会すると、解約金は母名義の別口座に振り込まれ、その後、数回に分けて引き出されていたことが判明しました。
総額は約600万円。
「何に使ったの…?」
真由美さんには、まったく心当たりがありません。
