マンションを売却しないで賃貸に出す区分所有者
■不在組合員の協力金
標準管理規約第35条第3項では、「理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する」と、役員の資格を「組合員」としていますが、それぞれのマンションの実態に応じて、「そのマンションに現に居住する。」など居住要件を加えることも可能とされています。ただしこの場合、現に居住する組合員のみが役員に就任できることになります。
さらに、単身赴任等で一時的に不在でも同居の家族等がなお住んでいるような場合には、彼らがその役割を果たせるよう、「同居の家族等」にも役員資格を認めるとすることが考えられ、このような取り決めをしている管理規約も数多くあります。
ただ、投資目的や転居によって住戸を賃貸に出しているような場合などには、やはり管理負担に不公平な状況が生じてしまいます。
そこで、このような不公平感を是正するために、不在組合員に対して協力金を追加徴収できるように規約の改正ができるか否かですが、最高裁判所は、追加徴収する必要性やその徴収額の程度によっては、社会通念上受忍すべき限度を超えた不利益をもたらさないとして、不在組合員の承諾がなくとも規約変更できると判断しました。
したがって、追加徴収の必要性が低い場合や、不在組合員に受忍限度を超える経済的負担増をもたらす規約変更の場合には、区分所有法第31条第1項後段の「規約の設定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別な影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」に基づき、不在組合員の承諾が必要になります。
なお、専有部に居住していない場合でも、当該専有部の賃貸は行わず、セカンドハウスとして使用している場合、家族や親戚に使用させている場合、空き室にしている場合などが考えられますので、規約や細則などで協力金を追加徴収できる不在組合員の判定基準を定めることも必要です。
マンションの管理組合を運営するに当たって必要となる業務及びその費用は、本来、その構成員である組合員全員が平等にこれを負担すべきものであって、かかる不公平を是正する規約改正には必要性と合理性が認められる。また負担額2500円は管理費用の15%に過ぎず相当な金額であり、特別の影響を及ぼす場合にあたらない、とした(最高裁平成22年1月26日判)
以前は、マンションを買い替える場合は、今住んでいるマンションを売って住み替えをしていました。最近は少子高齢化による高齢者介護の問題等、将来的な不安から安定した家賃収入を得ることを前提に、今住んでいるマンションを売却しないでそれを賃貸に出す区分所有者が増えています。
分譲マンションは、一般の賃貸マンションに比べて一般的に設備もよく、充実しているし、構造がしっかりしており、防音や防災の面で優れているといわれています。加えて、修繕補修などの心配がない、セキュリティがしっかりしているなどで人気が高いことが考えられます。退職して年金生活を送る人にとっては、こうした家賃収入は生活の支えになっているケースもあります。
築年数を経るにしたがって、分譲マンションの中で賃貸に出される比率は高くなります。近年分譲マンションの賃貸化が進み「役員のなり手がいない。」という相談が多くなっています。
また、それにより、総会に実際に出席する組合員の数も減少する傾向にあります。
議決権行使書や委任状の役割が重要になりました。この書面または代理人による議決権行使は、区分所有者の法律上の権利ですから、規約等でこれを一切認めないと定めたり、著しい制限を加えたりすることは認められません。
松本洋
松本マンション管理士事務所代表