日本法人の活用で煩雑な相続手続きを避けられる
個人が海外の銀行に直接預金している場合や海外の証券会社を通じて直接投資している場合、あるいは海外不動産を直接所有している場合には、第2回の連載で説明したように、現地国でのプロベートの問題が生じてしまいます。それを避ける方法の一つとして、資産管理会社に海外資産を持たせて承継する方法が考えられます。
この資産管理会社も、日本に法人を設立しそこに海外資産を持たせる方法と、海外に法人を設立しそこに海外資産を持たせる方法があります。日本で設立した法人に海外資産を持たせる方法としては、現地に支店等を開設し資産を所有するか、支店等を開設せずに直接所有する方法、あるいはさらに現地子会社を設立しそこに資産を持たせる方法があります。
どの方法を選択するのが最も望ましいのかについては、現地国の法規制(会社法等)や税制を検討し、さらには海外資産に生じた損害賠償が直接個人に及ぶのを避けること等を含め総合的に勘案する必要があります。
日本で設立した法人が海外資産を所有するということは、海外資産が、日本法人の株式である国内財産に転換することになります。日本の相続税の観点からは他の日本財産と何ら変わりませんので、相続人が制限納税義務者であっても日本の相続税の対象となります。一方で、相続が発生したときは、日本の株式を誰が相続するかという日本国内の相続手続きになりますので、現地国での煩雑なプロベートを避けることができるでしょう。
海外法人では現地国での相続手続きが必要に
次に、海外に資産管理会社を設立し海外資産を持たせる方法は、現地国の会社法制度に則って会社を設立しそこに現地国の資産を移転させる、または今後新たに購入させることになります。日本の相続税の観点からは、海外の法人ですので国外財産となり制限納税義務者が相続すると日本の相続税の課税対象外となります。
問題は現地国でのプロベートです。現地国の法規制によりますが、一般的には現地銀行、証券会社、あるいは行政といったところとの対応で、相続発生の事実や相続人であることの証明、本人確認等の煩雑な手続きが少し緩和されるかもしれません。
このように、資産管理会社を活用する場合には、その株式を国外財産にすることで日本の相続税の課税対象外にしたほうがいいのか、あるいは相続税の課税対象となったとしても現地国での煩雑なプロベート手続きを避けたほうがいいのかについて、相続人の将来のライフプランや語学力等を総合的に勘案して決めていくことになるでしょう。