前回は、「外国債券」の利子への課税のうち、現地国での取り扱いについて説明しました。今回は、日本での取扱いについて見ていきます。

どこの証券会社を通じて購入したかが問題に

今回は、外国債券の日本での課税について見ていきます。

 

(2)日本の課税

外国債券の購入は、以下のように、①国内の証券会社を通じて行う場合と、②直接、現地の証券会社を通じて行う場合とで、日本での確定申告や税金に違いがあります。

 

①国内の証券会社から購入する

●保有時

外国債券は、保有時に運用益として利子と為替差損益が生じます。それぞれに対して以下のような課税が行われます。

 

・利子

日本国内で発行する「外貨建て国内債」「円建て外債(サムライ債)」「外貨建て国内債(ショウグン債)」の利子については外国税が課されることはないので、国内において20.315%(所得税及び復興税15.315%、住民税5%)の税率で源泉徴収が行われ、課税関係が終了します。また、IMFや世界銀行などが日本国内で発行する債券の利子については、設立協定に基づいて源泉徴収が行われません。そこで、総合課税の利子所得として確定申告を行う必要があります。

 

次に、国内の証券会社を通じて支払いを受ける外国債券の利子は、外国で源泉徴収された外国税額と合計で20.315%を限度に国内で源泉徴収され課税関係が終了します。これを差額徴収方式による源泉分離課税といいます。なお、差額徴収方式ですので外国税額控除の適用はありません。

 

・為替差損益

利子の収入時の円貨額と実際に証券会社から支払われる日との間に為替相場が変動した場合は為替差損益が発生します。この場合の為替差損益は雑所得として取り扱われます。

 

●元本売却時

外国債券の元本売却時の課税としては、譲渡損益に対する課税と償還差益に対する課税があります。

 

・譲渡損益

外国債券のうち、一般の利付債を譲渡した場合は、所得税及び住民税は非課税とされています。そのため、譲渡損については生じなかったものとされ、税務上は一切考慮されません。

 

新株予約権付社債(ワラント債など含む)を譲渡した場合は、「株式等に係る譲渡所得等」として所得税、住民税の申告分離課税の対象とされています。従って、日本の証券会社を通じて譲渡した場合には20.315%(所得税及び復興税15.315%、住民税5%)の申告分離課税で課税関係が終了します。

 

割引債であるゼロクーポン債等、一定の外国債券を譲渡した場合は、譲渡所得として総合課税の対象となります。保有期間が5年を超えるか否かによって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分類され、それぞれの譲渡所得金額の計算方法は異なります。総合課税の税率は、最低15.105%(所得税5.105%、住民税10%)から最高55.945%(所得税45.945%、住民税10%)で課税されます。

 

・償還差益

外国債券の償還差益は、雑所得として総合課税の対象となります。その償還差益は、割引債であれ利付債であれ、債券が償還された場合に支払いを受ける償還金額がその債券の取得のために要した金額を超える場合の差益をいいます。また、現地で支払った外国税額がある時は、外国税額控除を受けることができます。

現地の証券会社で購入した国外発行債券の利子は・・・

②現地の証券会社から購入する

 

●保有時

国外で発行された債券の利子で国外において支払いを受けるものについては、国内における源泉徴収の対象とはなりません。従って、国内債券の利子などに適用される源泉分離課税の適用はなく、総合課税の利子所得として確定申告をしなければなりません(利子所得を計算する場合の円換算は、現地での受領日の為替レートで計算します)。

 

●元本売却時

・譲渡損益

外国債券の譲渡について、一般の利付債券の譲渡による非課税規定、及びゼロクーポン債等、一定の外国債券を譲渡した場合の譲渡所得としての総合課税の規定は、国内の証券会社を通じて譲渡した場合も、直接、現地の証券会社を通じて譲渡した場合でも同じ取り扱いです。

 

異なるのは、新株予約権付社債(ワラント債など含む)を譲渡した場合の「株式等に係る譲渡所得等」として所得税、住民税の申告分離課税の対象とされる場合です。国内の証券会社を通じて譲渡した場合は10.147%(所得税及び復興税7.147%、住民税3%)の申告分離課税ですが、直接、現地の証券会社を通じて譲渡した場合は20.315%(所得税及び復興税15.315%、住民税5%)の申告分離課税となります。

 

・償還差益

外国債券の償還差益は、国内の証券会社を通じて償還を受けた場合も、直接、現地の証券会社を通じて償還を受けた場合でも同じ取り扱いで、雑所得として総合課税の対象となります。また、現地で支払った外国税額があるときは、外国税額控除を受けることができます。

本連載は、2014年9月18日刊行の書籍『海外資産の相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

海外資産の相続

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永峰潤・三島浩光

幻冬舎メディアコンサルティング

金融商品や不動産など、海外資産の相続は、手続きが面倒なため、家族の誰も欲しがらないお荷物になってしまうことが多い。ただでさえ複雑な日本の相続税に、国や地域によって異なる税制が絡んでくるため、その処理にも煩わされ…

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