前回は、「外国債券」の利子への課税のうち、日本での取り扱いについて説明しました。今回は、外国投資信託の運用益への課税のうち、現地国での取り扱いについて見ていきます。

専門家でも理解が難しい投資信託の税務だが・・・

今回は外国投資信託現地国での課税について見ていきます。

 

4.外国投資信託

 

外国投資信託に対する税務の取り扱いについては、投資が一般的な「公募外国株式投資信託」と「外国公社債投資信託」に絞って説明します。

 

ところで、公募外国株式投資信託と外国公社債投資信託ですが、公社債投資信託は公社債以外のものは一切含んではならないというルールと、後ほど説明するように課税が株式投信より高いこと、また、株式投信であっても運用商品に社債を組み入れる自由度があることから、実際には株式投信で外国債券が運用されることが普通に行われています。

 

これから見ていくように、投資信託の税務は我々専門家でもめまいを覚えるくらい複雑です。なぜこのような税制になったのか(恐らくは業界団体の陳情等からでしょう)の経緯は分かりませんが、このような税制が投資家にとって、投資信託が分かりにくい、何か騙されているように思える、という理由の一つにもなっていると思います。シンプルな税制! これが一番です。

運用益への課税は現地国で源泉徴収されるのが一般的

(1)現地国の課税

保有時の運用益に対する課税ですが、現地国での一般的な課税は公募外国株式投資信託の収益の分配金は配当所得に、外国公社債投資信託の収益の分配金は利子所得に該当し、本連載の第7回「2.外国株式」と、第8回「3.外国債券」で説明したように、一般的には現地国で源泉徴収が行われます。

 

次に、日本居住者が元本を売却したときの課税ですが、租税条約において譲渡所得に該当するのかその他所得条項に該当するのかを検討しなければならず、該当する所得条項によって課税関係が異なる場合があります。一般的に、譲渡所得あるいはその他所得条項のいずれに該当しても居住地のみ課税と規定している場合が多く、その場合は現地国では非課税となります。

 

次回は、外国投資信託日本での課税について見ていきます。

本連載は、2014年9月18日刊行の書籍『海外資産の相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

海外資産の相続

海外資産の相続

永峰潤・三島浩光

幻冬舎メディアコンサルティング

金融商品や不動産など、海外資産の相続は、手続きが面倒なため、家族の誰も欲しがらないお荷物になってしまうことが多い。ただでさえ複雑な日本の相続税に、国や地域によって異なる税制が絡んでくるため、その処理にも煩わされ…

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