近年、相続税を支払う人の数は増え続けています。本連載では、不動産を複数所有する地主が陥りやすい「相続破産」の実際について見ていきます。

土地持ちであるほど負担が過重になる相続税制

相続破産――その名の示す通り、相続の結果、破産状態に陥ることです。今、この不吉な響きをもった言葉が、これから相続を迎えようという人たちの間で大きな関心を集めています。

 

「破産」はいうまでもなく財産をすべて失ってしまうことです。一方、「相続」は亡くなった人の財産を家族などの相続人が引き継ぐことです。そのため、「相続破産」という字面だけを見ていると、「相続で財産が増えるのに、どうして破産するような状況に陥るのだ?」と疑問に思う人もいるでしょう。

 

相続が破産をもたらす理由――それは「相続税」にあります。相続税の過大な負担がのしかかる結果、最悪の場合、すべての財産を失うような状況に、あるいはそれに近い事態に、遺産を相続した人が追い込こまれてしまうおそれがあるのです。とりわけ、現在、多くの不動産を所有する土地もちの家で相続が発生した場合には、「相続破産」の危険がより一層大きくなります。なぜならば、相続税の制度が「土地を持っていれば持っているほど負担が重くなる仕組みとなっている」からです。

財産の中で最も高額になる土地と建物

相続税は、相続した財産に対して課される国税であり、所得税と同じように累進課税方式となっています。つまり、相続する財産の額が大きければ大きいほど相続税の額は増えていきます。

 

そして、財産の中で通常、最も高額になるものは土地や建物などの「不動産」です。ことに、首都圏や地方の中心都市に土地を所有しているような場合には、それだけで相続財産が1億円、2億円を超えることも珍しくありません。そのため、土地を所有している人は、納めなければならない相続税の額が格段に大きくなる可能性が高くなるのです。

 

実際、相続税の課税対象となる人の多くは、巨額の相続税を納めることを余儀なくされています。下記の図表は「相続税の課税状況の推移」についてまとめたものですが、そこに示されているように、近年は被相続人1人当たりの相続税の額が2000万円台で推移しているのです。

 

【図表 相続税の課税状況の推移】

財務省のHPより
財務省のHPより

本連載は、2016年6月30日刊行の書籍『「相続破産」を回避する地主の生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「相続破産」を回避する地主の生前対策

「相続破産」を回避する地主の生前対策

加瀬 義明

幻冬舎メディアコンサルティング

2015年1月から実施された相続税増税により、「資金が足りずに税金が払えない」「不動産を手放すしかない」という人が急増しています。 不動産の売却によって納税資金を用意できればいいものの、「隣地との境界問題が解決でき…

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