前回は、不動産の相続税評価が「本来の価値以上」になってしまう理由を取り上げました。今回は、不動産の相続税評価を「時価」にして税額を抑える方法について見ていきます。

時価の適正な算出には不動産鑑定士への依頼が必要

ムダな税金を払わないようにするために不動産を適正な形で、時価で評価することを望むのであれば、不動産評価の専門家である不動産鑑定士に鑑定を依頼することが必要になります。

 

不動産鑑定士は国家資格であり、不動産鑑定士試験に合格し、所定の手続きを経た後で実務を行うことが可能となります。ちなみに不動産鑑定士試験は、司法試験、公認会計士試験と並ぶ「三大難関試験」といわれています。

 

一般にはあまり馴染みがない職業なので、その仕事に関して具体的なイメージがほとんどないかもしれませんが、毎年3月に公表されニュースなどでも取り上げられる地価公示の「公示価格」は、不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて定められています。

 

また、こうした公的な仕事だけでなく、会社が合併する際の資産評価など民間の求めに応じた不動産の評価も行っています。相続税対策を目的とした評価、すなわち不動産の適正な時価を算定することを目的とした鑑定評価もその1つになります。

路線価には反映されないマイナス要因も考慮

そして、このような不動産鑑定士が行った鑑定評価の結果をまとめた文書を「不動産鑑定評価書」といい、下記に挙げたような事項が記載されることになります。

 

①対象不動産

鑑定評価の対象となった不動産に関する情報が示されます。土地であれば所在、地番、種別(地目)、面積が、建物であれば所在、家屋番号、構造、用途、床面積、付属建物等になります。

 

②対象となった権利

鑑定評価の対象となった権利、具体的には不動産に関する所有権、貸借権等の権利が表示されます。

 

③鑑定評価額

鑑定評価の対象となった権利の評価額が示されます。

 

④価格時点

価格を判定した基準日のことです。鑑定評価を行った日を基準として、現在の場合(現在時点)のほか、過去の場合(過去時点)、将来の場合(将来時点)に分けられます。

 

以上のほか、評価を依頼した目的や鑑定評価の条件、価格の種類、縁故または利害関係の有無、鑑定評価の決定の理由なども記されます。

 

相続税の申告の際には、この不動産鑑定評価書を申告書に添付して提出します。その結果、相続税の額を大きく減らすことが可能となるでしょう。

 

たとえば土壌汚染があるにもかかわらず路線価方式では1億円と評価されていたような土地が、不動産鑑定評価書の中でその事実が指摘され、路線価基準よりもはるかに低い金額で評価されることになるのです。

本連載は、2016年6月30日刊行の書籍『「相続破産」を回避する地主の生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「相続破産」を回避する地主の生前対策

「相続破産」を回避する地主の生前対策

加瀬 義明

幻冬舎メディアコンサルティング

2015年1月から実施された相続税増税により、「資金が足りずに税金が払えない」「不動産を手放すしかない」という人が急増しています。 不動産の売却によって納税資金を用意できればいいものの、「隣地との境界問題が解決でき…

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