「陰の立役者」…調味料に頼らないおいしさの秘訣
●香ばしさとコクで味わいを深める
味覚には分類されないものの、おいしいと感じるときに陰の立役者になることが多いのが「香ばしさ」です。食材をさっと炙ったり焼いたりしたときにできる、うっすらした焦げなどは食欲をそそります。カリッとした食感も含め、食事の満足感を上げてくれます。
また、煮物などではほどよい油分で「コク」が出ていれば、塩味が薄いとしてもおいしく食べられるものです。
油分は摂り過ぎるとカロリーオーバーが心配ですが、上手に利用して塩味に頼らないおいしさを出すことは十分に可能です。
●食材そのものを味わう
新鮮な魚や野菜などは、その食材自体がおいしいので、濃い味付けにしてしまうのはもったいないと思います。旬のものや鮮度の高いものを使うなど、良い食材選びも、減塩につながります。
例えば肉と一口にいっても、鶏肉には鶏肉の、豚肉には豚肉のそれぞれ違った味わいがあります。お刺身にも同じことがいえます。
よく、美食家は刺身にほんの少ししか塩やしょうゆをつけない、といいますが、確かに魚本来の味をよく知っていて、それを味わいたいからこそ、そのような食べ方になるのだろうな、と思いますし、実際、しょうゆをべったりつけてしまうよりもおいしそうです。しかも塩分は控え目なので、腎臓にとっても優しい食べ方といえます。
一方、煮込み料理は、野菜や魚、肉といった食材そのものから旨味が出ます。その味わいを楽しめるようになれば、塩やしょうゆといった調味料が少なくてもおいしく食べられるようになります。
そうしたことが無理なくできるようになれば、薄味でも十分においしく、食事が楽しめるのではないかと思うのです。
なお、おいしいかそうでないかは、温度も大いに左右すると思います。
例えば、しゅうまいや天ぷらは冷えてから食べたのでは風味もないうえに、衣などが硬くなって食感も悪くなってしまいます。一方、冷奴やそうめんなどは、冷えていないとおいしく感じられません。
減塩目的でなくても、熱いものは熱く、冷たいものは冷たくして食べる、というのがおいしい食事の基本だと思います。これを守るようにするだけでも、余計な調味料を使わずに、食材本来の味をよく味わうことができるのです。