米国年末商戦の行方は?今年は異例の対応続き (※画像はイメージです/PIXTA)

NRF(全米小売業協会)によれば、今年の米国年末商戦における小売売上高は過去最高になる見通しだ。堅調な個人所得や健全な家計のバランスシート、さらには小売企業におけるサプライチェーン問題への対応等がその要因とされるが、小売企業の粗利益率についてはその企業の価格決定力に左右されやすいため、ファンダメンタルズをより一層精査する必要がある。

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NRF(全米小売業協会)は過去最高の小売売上高を予想

NRF(全米小売業協会)は、今年の年末商戦(11-12月)の小売売上高が過去最高の8,434億~8,590億ドル(前年同期比8.5~10.5%増)になるとの見通しを示している(図表1)。これは過去5年間の平均4.4%増を上回るほか、昨年の8.2%増という高い伸び率をも上回る水準だ。

 

毎年11~12月の小売売上高、単位:億ドル、期間:2015年~2020年 2021年はNRF予想(レンジの中央値を使用) 出所:NRF(全米小売業協会)のデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国年末商戦の小売売上高とNRF予想 毎年11~12月の小売売上高、単位:億ドル、期間:2015年~2020年
2021年はNRF予想(レンジの中央値を使用)
出所:NRF(全米小売業協会)のデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

NRFは、個人所得の増加や強固な家計のバランスシート(高水準の貯蓄等)が消費に寄与するとみているほか、小売企業が消費者の旺盛な需要に応えるためにサプライチェーン(供給網)に多大な投資を行い、在庫を確保するために多額の費用を投じていることが奏功すると見込んでいる。

 

実際、小売最大手のウォルマートやホームセンター最大手のホームデポ、会員制卸売大手のコストコなどは自前のチャーター船を確保し、供給網のボトルネックに対処しようとしている。また、通常であれば感謝祭翌日のブラックフライデー(今年は11月26日)から本格化する年末商戦をオンライン小売大手のアマゾン・ドット・コムは10月4日、ウォルマートや百貨店のメーシーズは11月初旬に開始するなど、売上が集中する時期をあえて分散させる異例の対応を行っている。

米国小売企業の決算動向はまだら模様

しかし、直近発表された米国小売企業の決算動向はまだら模様だ。ホームデポが11月16日に発表した21年8-10月期(3Q)決算では調整後EPS(1株当たり利益)が3.92ドルと市場予想の3.39ドルを上回った。物流コストの増加を販売価格にうまく転嫁することができたこと等が評価され、株価は前日比5.73%上昇した(図表2)。

 

日次、配当込み、米ドル建て、2021年9月30日=100で指数化 期間:2021年9月30日~11月19日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]S&P500指数と米国小売株の株価推移 日次、配当込み、米ドル建て、2021年9月30日=100で指数化
期間:2021年9月30日~11月19日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

一方、同日発表したウォルマートの21年8-10月期決算は調整後EPSが1.45ドルと市場予想の1.40ドルを上回ったが、上方修正された22年(会計年度)の調整後EPSガイダンスはほぼ市場予想通りとなり、むしろサプライチェーンの制約に伴う利益率の低下等が嫌気され、株価は前日比2.55%下落した。

 

11月18日に発表されたメーシーズの21年8-10月期(3Q)決算では、市場予想を上回る調整後EPSを発表したほか、22年(会計年度)の調整後EPSガイダンスを従来の3.41~3.75ドルから4.57~4.76ドルへ中央値で30.3%も上方修正したため、株価は前日比21.17%上昇した。決算会見においてジェネット会長兼CEOが、サプライチェーン問題が今年の年末商戦において重大な影響を及ぼすことは無いとコメントしたことも、買い安心感につながった可能性がある。

 

今年の米国年末商戦の「売上高」については好調な数字が期待される一方、企業の「粗利益率」についてはその企業の価格決定力(コスト増加分をどれだけ価格転嫁できるかどうか)に左右されやすいため注意が必要だ。今回のようにサプライチェーン問題や労働力不足等によってインフレ圧力が高まる局面では、個別企業のファンダメンタルズをより一層精査する必要があるだろう。

 

 

※個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国年末商戦の行方は?今年は異例の対応続き』を参照)。

 

(2021年11月22日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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