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国際的な潮流:求められる温暖化対策と安定供給
気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)期間中の11月9日、エンマニュエル・マクロン仏大統領は、原子力を電力供給と産業の中核に位置付け、欧州加圧水型原子炉(EPR)の建設を再開すると表明した。また、福島第一原子力発電所の重大事故を受け、2022年中に全原子炉を止めると決めたドイツだが、化石燃料価格の高騰に直面して、近く発足する社会民主党(SPD)主導の新政権がエネルギー政策を転換する可能性も取り沙汰されている。
温室効果ガスの排出削減は喫緊の課題だが、欧州は異常気象により再エネの電力供給量が落ち込んだ。その結果、化石燃料価格が高騰しており、再エネ比率をさらに上げる上で、安定的で経済効率が良く、温室効果ガスを排出しないベースロードの必要性が再確認されたと言えよう。その役割の担い手として、原子力が改めて注目されているわけだ。
国際原子力機関(IAEA)によれば、現在稼働している商業用原子炉は世界全体で442基であり、稼働年数別では運転開始から31〜40年間のボリュームが最も大きい(図表1)。
2度の石油危機に見舞われた1970年代に計画された炉だ。その後、1979年のスリーマイル島(米国)、1986年のチェルノブイリ(旧ソ連)、そして2011年の福島第一の事故を受け、先進国における新規建設は低水準で推移した。
もっとも、近年、新興国による商業用原子炉の建設が相次いでいる。特に目立つのは中国だ。同国で稼働中の原子炉は52基だが、うち37基が過去10年間に運転を開始した。さらに、現在、世界で建設中の51基のうち、14基は中国国内である(図表2)。今後10年以内に中国がフランス、米国を抜き世界最大の原子力大国になる可能性は否定できない。
日本の関連産業:中国の対抗勢力になれるか?
福島第一の事故から10年が経過するなか、再エネとの親和性が高いだけに、今後、地球温暖化対策の切り札として原子力が再浮上するのではないか。小型モジュール炉(SMR)や高温ガス炉(HTGR)の研究・開発も進むだろう。
問題は新興国・途上国における原子炉の建設だ。核不拡散の観点から、燃料供給、使用済み燃料の引き取り保証など、核燃料サイクルの厳格な管理が求められる。さらに、複雑な構造を持つ商業用原子炉の場合、建設ノウハウが極めて重要だ。自国内で多数の発電所を建設している中国が、今後、受注競争において優位性を発揮するのではないか。
福島第一の事故以降、日本の原子力産業は冬の時代にある。一方、10月22日に閣議決定された『第6次エネルギー基本計画』は、政府の中途半端な姿勢を再確認させた。
ただし、国際的な原子力回帰の動きは、日本の関連企業にとり復活のチャンスとも言える。3分割を発表した東芝と三菱重工、日立の事業再編などダイナミックな動きがあれば、中国に対抗する勢力として存在感を発揮する可能性があろう。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『温暖化への切り札となる原子力』を参照)。
(2021年11月19日)
市川 眞一
ピクテ投信投資顧問株式会社 シニアフェロー
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