温暖化への切り札となる原子力 (※画像はイメージです/PIXTA)

地球温暖化抑止とエネルギーコストの抑制…この2つの問題に直面して、欧州ではフランスが原子力へ回帰、ドイツの新政権による判断が注目される。再生可能エネルギーの利用拡大には、安定的なベースロードが必要不可欠だ。脱化石燃料を進める上で、原子力が改めて注目を集めている。日本においては、政府の対応と原子力関連メーカーの動きが注目されよう。

\12/2(木)緊急開催/
2022年4月、東証の「市場再編」
中小型株に生まれる投資機会とは?

国際的な潮流:求められる温暖化対策と安定供給

気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)期間中の11月9日、エンマニュエル・マクロン仏大統領は、原子力を電力供給と産業の中核に位置付け、欧州加圧水型原子炉(EPR)の建設を再開すると表明した。また、福島第一原子力発電所の重大事故を受け、2022年中に全原子炉を止めると決めたドイツだが、化石燃料価格の高騰に直面して、近く発足する社会民主党(SPD)主導の新政権がエネルギー政策を転換する可能性も取り沙汰されている。

 

温室効果ガスの排出削減は喫緊の課題だが、欧州は異常気象により再エネの電力供給量が落ち込んだ。その結果、化石燃料価格が高騰しており、再エネ比率をさらに上げる上で、安定的で経済効率が良く、温室効果ガスを排出しないベースロードの必要性が再確認されたと言えよう。その役割の担い手として、原子力が改めて注目されているわけだ。

 

国際原子力機関(IAEA)によれば、現在稼働している商業用原子炉は世界全体で442基であり、稼働年数別では運転開始から31〜40年間のボリュームが最も大きい(図表1)。

 

期間:1969~2021年10月 出所:IAEAのデータよりピクテ投信投資顧問が作成
[図表1]世界の商業用原子炉の運転開始からの年数と出力 期間:1969~2021年10月
出所:IAEAのデータよりピクテ投信投資顧問が作成

 

2度の石油危機に見舞われた1970年代に計画された炉だ。その後、1979年のスリーマイル島(米国)、1986年のチェルノブイリ(旧ソ連)、そして2011年の福島第一の事故を受け、先進国における新規建設は低水準で推移した。

 

もっとも、近年、新興国による商業用原子炉の建設が相次いでいる。特に目立つのは中国だ。同国で稼働中の原子炉は52基だが、うち37基が過去10年間に運転を開始した。さらに、現在、世界で建設中の51基のうち、14基は中国国内である(図表2)。今後10年以内に中国がフランス、米国を抜き世界最大の原子力大国になる可能性は否定できない。

 

期間:2021年10月現在 出所:IAEAなどのデータよりピクテ投信投資顧問が作成
[図表2]国別の建設中商業用原子炉数とその定格出力 期間:2021年10月現在
出所:IAEAなどのデータよりピクテ投信投資顧問が作成

日本の関連産業:中国の対抗勢力になれるか?

福島第一の事故から10年が経過するなか、再エネとの親和性が高いだけに、今後、地球温暖化対策の切り札として原子力が再浮上するのではないか。小型モジュール炉(SMR)や高温ガス炉(HTGR)の研究・開発も進むだろう。

 

問題は新興国・途上国における原子炉の建設だ。核不拡散の観点から、燃料供給、使用済み燃料の引き取り保証など、核燃料サイクルの厳格な管理が求められる。さらに、複雑な構造を持つ商業用原子炉の場合、建設ノウハウが極めて重要だ。自国内で多数の発電所を建設している中国が、今後、受注競争において優位性を発揮するのではないか。

 

福島第一の事故以降、日本の原子力産業は冬の時代にある。一方、10月22日に閣議決定された『第6次エネルギー基本計画』は、政府の中途半端な姿勢を再確認させた。

 

ただし、国際的な原子力回帰の動きは、日本の関連企業にとり復活のチャンスとも言える。3分割を発表した東芝と三菱重工、日立の事業再編などダイナミックな動きがあれば、中国に対抗する勢力として存在感を発揮する可能性があろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『温暖化への切り札となる原子力』を参照)。

 

(2021年11月19日)

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニアフェロー

 

\12/2(木)緊急開催/
2022年4月、東証の「市場再編」
中小型株に生まれる投資機会とは?

 

\PR/ 年間延べ2000人以上が視聴!
カメハメハ倶楽部
「資産運用」セミナー

 

【カメハメハ倶楽部のイベント・セミナー】

※<特設ページ>富裕層のためのヘッジファンド活用

 

【12/1開催】希少な"FIT型案件”を限定公開「太陽光発電」投資の最新事情

 

【12/1開催】「立ち退き、賃料増額調停」のトラブル事例と対応のコツ<弁護士が解説>

 

【12/2開催】税務メリットとキャピタルゲインが狙える!小型航空機・ヘリ投資とは?

 

【12/2開催】プロでも間違えやすいグループ再編成を活用した事業承継のルールとは?

 

【12/2開催】2022年4月、東証の「市場再編」中小型株に生まれる投資機会とは?

 

【12/7開催】市場の変動に左右されず安定した収益を獲得するための 「ヘッジファンド」戦略

 

【12/8開催】企業オーナー向けの決算対策「オペレーティングリース」投資の基礎講座

 

【12/8開催】相続、事業・資産承継の悩みを解決する「民事信託」の具体的活用術

 

【12/11開催】償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力<幻冬舎会場・限定版>

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・Deep Insight

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!