月の養育費は62万円
夫婦関係を再構築してタワマンに住み続けたいあゆみさんと、一刻も早く離婚をしたい拓也さん。こじれた関係は、金銭面にも波紋を広げました。
「民法第760条『婚姻費用の分担』では、『夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する』と定められています。この条件は、別居中も変わりません。
そこで当方側は、日常の生活費、医療費、教育費、保険料など、未成熟子をあわせた家族が生活を営む上で必要な生活費用である、婚姻費用を拓也さんに請求しました。
ところが請求を離婚する意思があると受け取った拓也さんは、タワマンの買い取りを離婚条件として挙げてきました。
今まで弁護を担当して見てきたケースにかぎられますが、男性の気持ちは、完全に離れるまでには時間がかかるものの、一度完全に離れると元には戻らないようにも思います。しかも双方に弁護士がついているため、直接話すこともかないません。弁護士同士の協議で解決できればベストですが、主張が平行線をたどったため、当方側で調停を起こして2人は離婚に。拓也さんが支払う月々の養育費は、62万円で決着しました」
養育費の額は、裁判所が規定している算定書によって決まるとのこと。「月々62万円は高額なのでは?」と齋藤弁護士に聞くと、「やや高めかもしれません」と言います。
裁判所のHPをチェックすると、権利者の年収が1000万円、義務者の年収が2000万円で養育費は月々24~26万円。齋藤弁護士が所持している、数字を入れると自動的に数字が算出されるソフトで入力した数字よりも62万円は高額の部類に入ります。
「齋藤先生が手腕を発揮されたのですね」と伝えると、「そう言っていただけるだけでうれしいです」と謙遜しますが、依頼する弁護士によってその後の生活にも影響が如実に表れる、顕著な例と言えるでしょう。
あゆみさんは離婚後もタワマンに住み続ける念願を達成しました。しかも、月々の生活費は62万円。ご自身が年収2800万円を稼いでいるので、生活はさらに潤うはずです。
拓也さんからは、自分名義のタワマンを破格で買い取ってほしいと打診されているとのこと。あゆみさんはいずれ自分名義にしたいと考えているそうで、十分に貯蓄をしてから拓也さんの打診に応じるかもしれません。
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妻が勝利と思いきや…
この不動産分与の結果は、あゆみさんの勝利なのでは。
「金銭面では、たしかにあゆみさんに有利な離婚が成立しました。
・タワマンという現物を購入してもらう
・決定的な浮気の証拠をつかむ
そこまでのステップは上々だったのです。しかし、浮気の証拠をつかんだとき、我慢の限界を迎えて感情的になってしまったのが致命的なミスでした。タワマンと同時に欲しがっていた、本当は実現していきたかった、夫婦関係の再構築がかなわなかったからです。ですから、完全勝利とは言えないではないでしょうか。そういう意味では悔しい気持ちも残っています」
離婚したくないのであれば、夫婦関係がピンチのときこそ感情的にならない。そんな学びを得られる事例でした。