(※写真はイメージです/PIXTA)

日本国内ではステータスが高いものの、離婚率が高い職業という説がある医師。「24時間相談受付」「LINEのIDを公開」するという型破りのスタイルで依頼を受けている銀座さいとう法律事務所の代表、齋藤健博弁護士のもとにも、医師のリコカツ(離婚活動)案件が殺到しているといいます。今回は、実際に齋藤弁護士に寄せられた実例をレポートします。※弁護士業の守秘義務遂行のため、一部の内容変更をご了承ください。

【ドロ沼離婚劇】マッチングアプリで出会った女医のまさかの価値観とは

逆格差カップルの離婚劇

女優・広瀬アリス似の美人女医、妻の藤木恭子さん(仮名/36歳)と夫の看護師業に従事する悟さん(33歳)は、入籍して同居1ヶ月で別居。11ヶ月後に離婚しました。2人の間に子どもはいません。

 

恭子さんの年収はおよそ3000万円。齋藤弁護士は恭子さんの弁護を担当したため悟さんの年収は不明ですが、本カップルを「女性が上位という、一般社会では珍しい“逆格差婚”です」と評します。

 

「依頼を請けたからには、依頼者ができるかぎり満足できる結果にしたいです」と言う、誠実さがモットーの齋藤弁護士。ただ、「依頼者が女性であっても異性ではなく、1つのプロジェクトを成功させるためのメンバーです」と言う齋藤弁護士ですら、“メンバー”である恭子さんに驚く場面があったそうです。(以下、「」内のコメントはすべて齋藤弁護士)。

相談の場に彼氏が同席!

相談に来た際、恭子さんの横には毎回、合コンで知り合ったという彼氏が同席していたそうです。しかも彼氏は恭子さんが離婚したら早々に彼女と結婚したいらしく、苛立ちつつ声をあらげる態度を齋藤弁護士にとり続けたとのこと。「早く進めろよ! 仕事ができない弁護士だな!」と怒鳴り散らされたこともあったそうです。

 

「恋人の前で調子に乗って偉ぶる男性は、依頼の場では珍しくありません。彼氏も恭子さんの前でカッコつけたかったのでしょう。自分を体裁よく見せるために、私は利用されたわけです。

 

慣れているのでなんとも思いませんでしたが、恭子さんはこの男性を次のパートナーに選んで大丈夫だろうか? と、疑問を覚えた瞬間でもありました。まだ離婚が成立していないのに、彼氏を同席させる恭子さんも恭子さんですが、同席はよくあるといえばよくある話です」

 

たしかに。飲食店やタクシーなど赤の他人への態度は、未来の自分の態度とも言われています。齋藤弁護士が危惧した未来が訪れないといいのですが。

妻が経済的DVをしていた可能性も

結婚後2人は、恭子さんの父親が所有する「住みたい駅ランキング」のトップ10内にランクインする地の高級マンションで新婚生活を始めました。

 

「恭子さんは、父親のものは私のもの、という認識だったのでしょう。私のおかげで生活できているのだから、私が不倫をしたからといって慰謝料を請求される理由がわからないと言っていました。慰謝料を請求するのであれば私は、今まで悟にしてあげたことを現金に換算して請求するとも言っていました。

 

もちろん、相手にしたことを現金に換算して請求することはできません。私は恭子さんの弁護担当なので悟さんの詳細に踏み込むことはありませんが、家事を担っていたという彼は、生活費も自身の給料から支払っていた可能性が高いと予想しました。恭子さんは、『私のお金は私のもの』と言っていたので、生活費を支払っていなかったかもしれないのです」

 

生活費を入れないのは、経済的DVでは?

 

「そのとおりです。民法752条で、『夫婦にはお互いに生活を助け合う義務があり、生活費は収入の大小などに応じて夫婦が分担する義務を負っている』ので、経済的DVに該当しえます。

 

本件は恭子さんが男性であれば、多額の慰謝料を請求されていたでしょう。妻が夫からパワハラや経済的DVを受けているのはよくある話ですが、いいか悪いかは別として、法律では社会的に弱いのは女性だと扱われていることが多いです。だから離婚後は、女性の経済的なケアをしやすい法律が整えられているとも言えます。本件は男女が逆という、珍しいパターンなのです」

 

悟さんは経済的DVにはとくにふれず、恭子さんの不貞行為に対して慰謝料1000万円を請求したそうです。不倫で離婚する場合、慰謝料の相場はいくらなのでしょうか。

 

「完全にクロだと特定できるかどうかで決まります。LINEのやり取りだけだと証拠として弱く、ホテルへ出入りする2人の写真などがあれば立証可能となります。

 

完全に立証できて離婚しないケースでは、高くて150から200万円。80万円程度のケースもザラにあります。離婚してしまうケースだと、200万円から300万円。証拠がないならば、200万円取れればいいほうです」

夫が請求した慰謝料は1000万円

では、恭子さんが悟さんへ支払った慰謝料は。

 

「1円も支払いたくないと言ってゴネ続けていましたが、100万円支払うことで納得していただきました。

 

恭子さんには申し訳ないのですが、離婚の真相を探るべく、私は恭子さんに悟さんの弁護士に連絡しました。

 

相手の弁護士と話をすると、悟さんはお金がほしくて慰謝料を請求したのではなく、恭子さんが浮気相手と別れて自分との関係修復に努めることを望み、あえて高額な慰謝料を請求したそうです。当時、恭子さんは8000万円ほどの預貯金を持っていたので、1000万円では痛くも痒くもなかったでしょうが、悟さんは恭子さんの預貯金額を知らなかったのでしょう。

 

私は『訴訟に発展したら長期になり、費用も高額になります。悟さんが出した条件をのめば、慰謝料は100万円ですみます』と恭子さんを説得しました」

それでも未練がある夫

悟さんが出した条件とは?

 

「・LINEはブロックしない。

・定期的に一緒に食事をする。

・お互いにパートナーができた場合は正直に開示する。

・子どもができた場合は伝える。

などです。

 

惚れた弱みでしょうか。悟さんは離婚しても、恭子さんをほかの男に盗られるのがイヤだったんでしょうね。

 

恭子さんは、『LINEは返信しなければいいだけだし、悟に新しいパートナーができたらほかの条件はうやむやになるでしょう』と、OKしました。悟さん、かわいそうに……」

 

悟さんの本音を知らずに「たった100万円で離婚ができた」と、喜んだ恭子さん。しかし因果応報という言葉どおりのように、恭子さんに100万円ではすまない金銭トラブルが降りかかります。詳細は次回にて。
 

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