(※写真はイメージです/PIXTA)

日本国内ではステータスが高いものの、離婚率が高い職業という説がある医師。「24時間相談受付」「LINEのIDを公開」するという型破りのスタイルで依頼を受けている銀座さいとう法律事務所の代表、齋藤健博弁護士のもとにも、医師のリコカツ(離婚活動)案件が多いといいます。今回は、実際に齋藤弁護士に寄せられた実例をレポートします。※弁護士業の守秘義務遂行のため、一部の内容変更をご了承ください。

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今回の相談者:藤木恭子さん(仮名/36歳)職業:クリニック勤務女医。女優、広瀬アリス似の美女。

 

家族構成

 

夫:悟さん(33歳)職業:看護師。齋藤弁護士によると、「お笑いコンビでイケメン“じゃないほう”と言われそうな顔立ち」とのこと。

 

子ども:なし。

今すぐ離婚したい!

「先生。私は夫と今日にでも離婚したいんです! 私に一切、非はないので慰謝料は支払わずに」

 

夫の悟さんに離婚訴訟を起こされて冷静さを欠いている女医の恭子さんをなだめ、齋藤弁護士が話を聞いたところ、彼女の父親は大手総合病院の開業医。父親は、都内に何室か賃貸用のマンションも所有しているそう。恭子さんは、正真正銘のお嬢様です。

 

恭子さんは現在、父親が経営する系列のクリニックで勤務医として働きつつほかの系列病院でもアルバイトをしていて、年収はおよそ3000万円とのこと。

 

看護師をしている悟さんの家庭は父親がサラリーマンで、実家は埼玉県。庶民的な暮らしをしてきました。

 

「女性が上位という、一般社会では珍しい“逆格差婚”です」(齋藤弁護士)

マッチングアプリで出会った二人

2人はどうやって出会ったのでしょうか。

 

「マッチングアプリです。悟さんは初めて恭子さんの写真を見たとき、『こんな美人がなぜアプリに登録しているんだろう!?』と訝(いぶか)しみつつも、自分から積極的にアプローチしたそうです。私は女性のご依頼者を異性としてみることはまずなくある意味“プロジェクトを成功させるためのメンバー”と認識しているのであくまでも個人的な見解になりますが、悟さんは美人の恭子さんに一目惚れしたのではないでしょうか。

 

恭子さんは、出会いに恵まれない職場環境に身をおいていました。看護師たちの目もあるなか、父親が経営するクリニックに勤務する男性医師と深い仲になるわけにはいかない。『交際しましたが別れました』では、父親の顔に泥を塗ることになります。なにより周囲の人から指摘されるのが嫌だと言っていました。看護士たちの、嘲笑の的にもなってしまうとも漏らしていました。


そろそろ身を固めたいと思っていても職場では相手を探せないと判断した恭子さんは、マッチングアプリに登録したそうです」(齋藤弁護士)

 

自身と同じ医療業界で働く看護師であれば諸事情を理解し合えると思ったのか、恭子さんは悟さんのアプローチを受け入れて結婚。2人は恭子さんの父親が所有する「住みたい駅ランキング」のトップ10内にランクインする地に位置する、高級マンションで新婚生活を始めました。ところが齋藤弁護士によると。

 

「同居1ヶ月後に恭子さんが家を出て別居。別居して11ヶ月経つ1年後に離婚が成立しました」

新婚女医の驚きの価値観

同居1ヵ月で別居!? 誰でも驚くと思いますが、齋藤弁護士いわく恭子さんが持つ結婚に対する価値観では、なるべくしてなったのでは……という実情がありました。齋藤弁護士が恭子さんから聞いた言葉を引用します。

 

「結婚前から私の本性を見抜いていた悟は言っていました。『結婚してから浮気してもいい。自分と離婚しなければ、なにをしてもかまわない』と。それなのに結婚して浮気したらすぐ、悟は私に私立探偵をつけて浮気の証拠を押さえて、突きつけてきたんです。『この男とは別れてほしい』と。

 

事前にしていた約束を、結婚してから反故(ほご)にするのはおかしくないですか? だから私は、悟に1円も慰謝料を支払わずに離婚したいんです」

 

齋藤弁護士によれば恭子さんのこの、一般常識とはかけ離れた価値観は、生ってきた環境が由来しているそうです。

 

「彼女の父親が派手に遊び、不倫相手と関係がこじれるとお金で解決する姿を幼い頃から見てきたそうです。だから事前に伝えておいたのに、発覚後に騒ぐのはおかしいというのが彼女の言い分です。母親が父親の浮気に目をつぶる姿も見てきたのでしょう。『(著名人ではない)男の浮気が水に流されて、女が責められるのは納得がいきません』とも言っていました」

夫婦間で不倫をOKとするのは法的にはNG

不倫を許す夫と、その言葉を信じた妻。夫婦間で不倫をOKにする事のは法律的に有効なのでしょうか。

 

「夫婦間の基本的な義務を定めた規定である民法752条では、

① 同居義務

② 協力義務

③ 扶助義務(「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」)

 

のみの明記であり、夫婦が互いに守操義務(貞操義務)を負っているのかは明確に読み取ることができるものではありません。

 

しかし、民法770条1号の「配偶者に不貞な行為があったとき」の項で不倫(不貞)行為が民法上離婚理由となっていることから見ても、夫婦がお互いに不倫をしてはならない義務を負っていることは明らかです。夫婦間の基本的な義務の1つとして、

 

④ 守操義務(貞操義務)

 

が導かれると、法律では解釈されています。

 

つまり、貞操義務を夫婦間だからといって免除できるかというと、法律というフィルターを通すと、免除になりません。恭子さんと悟さんのような、妻の不倫を夫が許すカップルはレアケースだと思いますが、口約束では彼らのように離婚時、もめる大きな原因になります」(齋藤弁護士)

 

しかし、「ほかの弁護士に負けないくらい、依頼者への愛情(個人的に抱く愛情ではなく、依頼を請けたからには果たすべき正義感を意味)は負けないつもりです」がモットーの齋藤弁護士は、依頼者であり有責者である恭子さんが納得するかたちで決着をつけました。その方法とは――。詳細は次回に続きます。
 

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