(※写真はイメージです/PIXTA)

日本国内ではステータスが高いものの、離婚率が高い職業という説がある医師。「24時間相談受付」「LINEのIDを公開」するという型破りのスタイルで依頼を受けている銀座さいとう法律事務所の代表、齋藤健博弁護士のもとにも、医師のリコカツ(離婚活動)案件が多いといいます。本連載では、実際に齋藤弁護士に寄せられた実例をレポートします。※弁護士業の守秘義務遂行のため、一部の内容変更をご了承ください。

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妊娠6ヶ月、夫の不倫が発覚

歯科医院の勤務医で、年収2800万円の黒木あゆみさん(仮名/30歳)と、総合病院で内科医として勤務していて、推定年収3000万円の拓也さん(仮名/37歳)は、パワーカップル。妊娠を機に結婚後、比較的裕福なファミリー層に人気のエリアに建つタワマンを、拓也さん名義で購入しました。

 

ところが、あゆみさんが妊娠6ヵ月目に拓也さんの不倫が発覚。激怒したあゆみさんは不貞の証拠を集め、タワマン引き渡し日翌日、拓也さんに証拠を突きつけます。

夫が出て行ったのか妻が追い出したのか

その後、2人はどうなったのでしょうか。齋藤弁護士に話を聞きました。

 

「同居後およそ2週間後に拓也さんが家を出て別居に至りましたが、2人の主張は真っ向から食い違っていました。あゆみさんは、『拓也が勝手に家を出て行き、不倫相手と同棲を始めた』と主張。拓也さんは、『あゆみに家から追い出された。行く場所がないから不倫相手の家に逃げ込むしかなかった』と言い張っていました。

 

私の見立てですが、かなり気が強いあゆみさんが、拓也さんを追い出したのだと見ることもできなくはないと思います。追い出した、追い出さないというより、現時点で同居状態が実現されていないのが問題です」

 

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夫婦の同居義務、悪意の遺棄の可能性も

配偶者を自宅から追い出す行為。法律的には?

 

「民法第752条には、夫婦間の義務である『同居の義務』『協力義務』『扶助の義務』が定められています。夫婦は同居し、互いに協力し扶助する義務、という意味です。この義務に違反すると離婚原因になりえますし、慰謝料を請求することができます。上記の相互扶助義務を正当な理由もなく果たさずにいると、民法第770条の『悪意の遺棄』に該当し、離婚理由になるとされています。具体的な状況は以下です。

 

・収入があるのに生活費を渡さない

・お互いの合意がないのに別居を始める

・家出を繰り返す

・配偶者を家から閉め出して、帰宅させないようにする

 

仮にあゆみさんが、拓也さんが帰宅しても鍵を開けないなど家から閉め出す行為に及んでいたら、悪意の遺棄に該当しえます。

 

別居に至るまで2人は毎日、大喧嘩を繰り返していたそうです。結果、拓也さんが家から閉め出されたとしても、法律の専門家でもない彼が『これは悪意の遺棄だ!』と反論できるとは想像できません。毎日不貞を責め続けられて根負けした拓也さんが、あゆみさんの閉め出しに渋々応じて別居が始まったと思われました」

 

別居を始めてから、拓也さんは離婚する意思を固めていったそう。「別居するとわかっていたらタワマンなんて買わなかった。あゆみに騙された! あんな腹黒女とは結婚生活を続けられない」と主張するようになったとのこと。

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