焼き鳥「全品298円均一」の恐るべき魔力
■潜在的なニーズを掘り起こす
お客さんの目線で「何ができるのか」を考えていくと、お客さんが気づいていないニーズを掘り起こすこともできます。例えば、焼き鳥屋の鳥貴族は看板に「全品298円均一」と掲げています。このコピーによって、「安くておいしい焼き鳥を食べたい」と思っている人たちを呼び込むことができます。
これは顕在化したニーズをつかむケースです。一方で、会社帰りにたまたま看板を見掛けた人や、飲んで帰ろうとは思っていなかった人に対しても「298円は安いなあ。ちょっと飲んで帰ろうかな」と思わせることができます。これは潜在的なニーズの掘り起こしです。
他業種では、整体とマッサージ店のりらくるは、店前の看板などで施術時間と料金を大きく宣伝しています。これも「空き時間で気軽にマッサージを受けたい」「低料金で体をほぐしたい」といったニーズを喚起するためのものです。安さや早さのほかにも、気軽さ、くつろぎ、おいしさ、静かさ、きれいさなどもニーズ喚起のコピーになり得ます。
どんなコピーが潜在的なニーズを掘り起こせるかは、呼び込みたいターゲット層を明確にすることによって見えてきます。彼らがどんなニーズをもっている人たちか把握し、そのニーズを刺激するコピーを看板に使うことによって、ニーズが顕在化していない人たちも呼び込むことができるのです。
夏場によく見掛ける「冷やし中華はじめました」の張り紙も、潜在的なニーズを掘り起こす看板の一つです。
この張り紙を見ることにより、お客さんは「もう夏だなあ」「冷やし中華の季節だなあ」と気づきます。そして、張り紙を見ることによって冷やし中華を食べたいというニーズが喚起され、「食べていこうかな」と考えるのです。
商品やサービスで競合との差別化が難しい場合、例えば、深夜営業の店なら「深夜までやっています」「24時間営業」といったコピーでお客さんを呼び込むことができます。繁華街の店で、どの店も待ち時間が長くなるなら、「座席数150席」といったコピーが刺さるでしょうし、昨今は多くの店が禁煙になりましたので、「タバコ吸えます」「喫煙ルームあり」「分煙」といったコピーも愛煙家には刺さります。
整骨院や整体院なら、保険適用、支払いについては「クレジットカード可」「分割払いOK」なども他店との差別化につながるコピーです。地方であれば「駐車場完備」なども車移動する人を呼び込むコピーになります。
越智 一治
有限会社オチスタジオ 代表取締役