(※写真はイメージです/PIXTA)

アパート経営においては、万が一のときのために「相続」について、考えておかなければなりません。アパートの相続の選択肢は大きく分けて2つ。「売却する」か、「経営を続ける」かです。今回は、売却、経営のいずれかを選択した後の手続きや税務について、事例を通じて見ていきます。

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将来的には息子に大家業を継いでほしいが…

【投資家プロフィール】
Aさん 70代男性
子どもは2人、どちらも大家業経験なし
中古アパート1棟所有(築17年)
最近の悩み:アパートに空室ができると、なかなか次の入居者が決まらなくなってきていること。

 

【事例の詳細】
アパートオーナーのAさんはひとり暮らしで、子どもとは離れて暮らしています。そろそろ相続について考えよう、と考えていた矢先に、所有しているアパートの近隣にある大学の移転計画を耳にしました。

 

Aさんが所有するアパートの入居者は、現状6割がその大学の学生なので、もし移転してしまうのであれば経営に支障をきたしてしまうことでしょう。ただ、駅前の再開発の噂もあり、真偽のほどはわかりません。移転計画にあわせて売却してしまうべきなのか、予定通り相続すべきか、Aさんは悩んでしまいました。

「売却」か「相続」か…判断するポイントは?

アパートの「売りどき」①:相場価格が上昇しているとき

不動産相場の価格が上昇しているときは、アパートを売る際のひとつの指標になります。全国の路線価の対前年変動率は2016年にプラスに転じて以来、2021年はコロナ禍で下落となりましたが、2020年まで5年連続で上昇傾向にありました。

 

Aさんの場合、移転計画や駅前の再開発により不動産相場価格が変動する可能性があるため、情報の真偽を確認し、所有物件の価格がどう動くのか、チェックする必要があります。

 

アパートの「売りどき」②:満室になっているとき

投資用のアパートの購入層である投資家としては、空室が多いアパートより満室状態のアパートの方が当然魅力的です。入居者の退去がいつ起こるかは予測できないため、現在満室であるならば、築年数による経年劣化、減価償却時期なども含めて、売却の時期として検討してみるべきです。

 

アパートの「売りどき」③:減価償却が終了したとき

減価償却はキャッシュアウトのない帳簿上の経費となるため、キャッシュフローに余裕ができます。ただし減価償却期間が終了してしまうと、その分経費が大きく減少し、利益が増え納税額が多額に出る可能性が高くなるため、キャッシュフロ-が悪化することとなります。

 

アパートの「売りどき」④:所有期間が5年を超えたとき

所有期間が5年を超えると、売却時の譲渡所得にかかる税率が安くなるため、売却のひとつの目安になるといえるでしょう。具体的な税率は以下の通りです。

 

所有期間が5年以下の税額:39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)
所有期間が5年を超えるときの税額:20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)

 

所有期間5年以下の場合と比較し、所有期間が5年を超えた場合では、所得税率が約半分となります。

現在の収支、見通しをしっかり確認することが重要

収支計画とは、「収入」から「支出」を差し引いて、いくら収益を得られるか、年単位で表にまとめたものです。年間の「収入」合計額が、「支出」の合計額よりも多い場合は、収益を得られます。賃貸経営の成功のためには、この収支計画が実現可能な範囲のものであることが重要となりますが、計画通りに進んでいるか、周囲の物件と比較しながら確認してみましょう。

 

もし計画通りに進んでいなかった場合、売却が有力な選択肢となります。所有を続ける場合も、リノベーションや広告宣伝など、なにか対策をとることを視野に入れるべきです。

 

次ページアパート売却に向けて準備するべきことは?

本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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