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連載ニッセイ基礎研究所レポート・インサイト【第47回】

フィリピン経済:21年7~9月期の成長率は前年同期比7.1%増~2期連続のプラス成長、感染再拡大による外出・移動制限の影響は限定的

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フィリピン経済:21年7~9月期の成長率は前年同期比7.1%増~2期連続のプラス成長、感染再拡大による外出・移動制限の影響は限定的 (写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年11月9日に公開したレポートを転載したものです。

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フィリピン経済:21年7~9月期の成長率は前年同期比7.1%増

2021年7~9月期の実質GDP成長率は前年同期比7.1%増※1(前期:同12.0%増)と低下し、市場予想※2(同4.9%増)を大きく上回る結果となった(図表1)。

※1 2021年11月9日、フィリピン統計庁(PSA)が2021年7~9月期の国内総生産(GDP)統計を公表した。

※2 Bloomberg調査

 

[図表1]フィリピンの実質GDP成長率(需要側)
[図表1]フィリピンの実質GDP成長率(需要側)

 

7~9月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内需の鈍化が成長率低下に繋がった。

 

まず民間消費は前年同期比7.1%増(前期:同7.3%増)と若干低下したものの、2期連続で高めの伸びを維持した。民間消費の内訳を見ると、衣服・履物(同24.5%増)と保健(同18.8%増)、教育(同14.5%増)、交通(同13.5%増)、レストラン・ホテル(同11.4%増)が二桁成長を続けたほか、民間消費全体の約4割を占める食料・飲料(同3.0%増)や通信(同7.5%増)、家具・住宅設備(同4.2%増)、住宅・水道光熱(同3.6%増)も増加傾向を保った。

 

政府消費は同13.6%増となり、前期の同4.2%減からプラスに転じた。

 

総固定資本形成は同16.0%増(前期:同39.8%増)と二桁成長となったものの、伸びが鈍化した。建設投資が同23.8%増(前期:同35.1%増)と好調を続けた一方、設備投資が同8.0%増(前期:同95.7%増)と減速した。なお、設備投資の内訳を見ると、全体の約半分を占める輸送用機器(同13.7%増)が大幅な増加が続いたものの、一般工業機械(同4.2%増)と産業用機械(同2.8%増)の伸びが一桁台に鈍化した。

 

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲2.2%ポイントとなり、前期の▲5.3%ポイントからマイナス幅が縮小した。まず財・サービス輸出は同9.0%増となり、急上昇した前期の同27.8%増から低下した。輸出の内訳を見ると、財輸出(同8.8%増)とサービス輸出(同9.6%増)がそれぞれ鈍化した。一方、財・サービス輸入も同13.2%増となり、前期の同48.3%増から低下した。

 

供給項目別に見ると、主に第二次産業の鈍化が成長率低下に繋がった(図表2)。

 

[図表2]フィリピン実質GDP成長率(供給側)
[図表2]フィリピン実質GDP成長率(供給側)

 

GDPの約6割を占める第三次産業は同8.2%増(前期:同9.8%増)と小幅に低下したが、堅調な伸びを維持した。宿泊・飲食業(同11.5%増)と運輸・倉庫業(同14.8%増)、専門・ビジネスサービス業(同11.5%増)、保健衛生・社会活動(同17.7%増)が二桁成長となったほか、全体の約2割を占める卸売・小売(同6.4%増)や不動産業(同4.7%増)、情報・通信業(同8.5%増)や金融・保険業(同6.4%増)、行政・国防(同5.2%増)もそれぞれ増加した。

 

第二次産業は同7.9%増となり、急上昇した前期の同21.0%増から低下した。まず製造業は主力のコンピュータ・電子機器(同17.8%増)こそ好調を維持したが、化学製品(同2.6%減)や輸送用機器(同0.9%減)が減少したほか、食品加工(同5.3%増)が鈍化するなど、製造業全体として同6.3%増(前期:同22.2%増)と減速した。また電気・ガス・水道(同2.9%増)と鉱業・採石業(同0.6%増)は小幅に増加した一方、建設業(同16.8%増)は二桁成長が続いた。

 

第一次産業は前年同期比1.7%減(前期:同0.0%増)と減少した。コメ(同5.6%増)とバナナ(同0.3%増)は増加したが、天候不順やアフリカ豚熱発生の影響により家畜(同15.6%減)やトウモロコシ(同18.2%減)、漁業・養殖業(同0.6%減)の生産が落ち込んだ。

7~9月期のGDPの評価と先行きのポイント

フィリピン経済は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に急速に景気が悪化、2020年の実質GDP成長率が前年比▲9.6%と減少した。フィリピン経済は感染第1波の長期化により政府が外出・移動制限措置を続けたため、経済活動の再開が遅れてマイナス成長で推移していたが、今年4~6月期の成長率は前年同期の落ち込みからの反動増(ベース効果)により前年同期比+12.0%に急上昇した。そして今回発表された7~9月期の成長率は同+7.1%と再び低下することとなった。

 

7~9月期の成長率低下は、4~6月期の成長率を押し上げたベース効果が一部剥落したことや、政府が一時的に外出・移動制限措置を厳格化したことが影響したが、総じて経済の回復の動きは続いているとみられる。フィリピンでは今年3月から変異ウイルスの流行や感染対策疲れなどにより感染第2波が到来(図表3)、その後も感染が十分に落ち着かない状況が続くと、7月半ばに感染拡大ペースが一気に加速、8月末には1日あたりの新規感染者数が2万人台を突破した。

 

しかし、フィリピン政府が8月上旬に首都圏・周辺州の外出・移動制限措置を最も厳しい水準に2週間引き上げたことにより、感染者数は9月から減少傾向に転じることとなった。小売・娯楽施設への人流は8月半ばにコロナ前と比較して約4割減少したが(図表4)、行動規制強化が短期間で終了したほか、前年同期の減少幅(約5割減)より小幅だったことから、7~9月期の民間消費は前年同期比+7.1%(4~6月期:同+7.3%)となり堅調な増加ペースを維持した。総固定資本形成(同+16.0%)と財・サービス輸出(同+9.0%)も4~6月期より増勢が鈍化したものの、高い成長ペースを保ったといえる。

 

[図表3]フィリピンの新規感染者数の推移
[図表3]フィリピンの新規感染者数の推移

 

[図表4]小売り・娯楽施設への移動量
[図表4]小売り・娯楽施設への移動量

 

足元の新規感染者数は1日2,000人台まで減少している。政府は感染状況の改善に伴い、首都圏で実施する外出・移動制限措置を10月中旬、11月上旬に段階的に緩和し、現在は5段階の上から4番目に厳しい措置を講じている。

 

またワクチン接種者の制限緩和や外出制限の実施範囲を細分化するなど、コロナとの共生を目指す内容に制限措置の内容が見直されており、市民生活は正常化に近づいてきているといえるだろう。12月にはクリスマス商戦が控えている。更なる消費の拡大が見込まれる一方、人流の活発化に伴う感染再拡大のリスクに注意する必要がありそうだ。

 

 

斉藤 誠

ニッセイ基礎研究所

 

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ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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