(※画像はイメージです/PIXTA)

現在、新型コロナ感染拡大の影響で、在宅医療がスタンダードになりつつあります。麻酔科医から在宅医へと転身した矢野博文氏は書籍『生きること 終うこと 寄り添うこと』のなかで、「最期までわが家で過ごしたい」という患者の願いを叶えるために、医師や家族ができることは何か解説しています。

 

とにかく入院してもらい、点滴で現状の改善を目指すこととなりましたが、Iさんは自分の境遇を悲しむわけでもなく、嘆くわけでもなく、怒りの感情もなく、ただ淡々と入院し、夕食の野菜雑炊を完食しました。

 

突然の入院から1週間で、Iさんはすっかり元気になりました。娘さんにも参加してもらい、退院に向けての話し合いをしました。自宅では息子さんと同居中でしたが、実質的には独居と変わらず、退院して自宅で生活するためには、食事と排便コントロールが問題となりました。

 

食事は配食サービスを利用し、医学的なことは訪問診療と訪問看護でカバーすることとし、やっと退院の運びとなりました。退院の数日後、化学療法のために病院を受診しましたが、CT検査で肝転移巣の拡大を指摘され、Iさんは自分の意思で治療を中止しました。

 

そんな重要な意思決定の後も、Iさんは淡々と自宅での生活を続けました。しかし食事や排便には無頓着で、食事は自分の好きなビスケットしか食べず、排便コントロールについて訪問看護師を困らせました。

ベットに飲み物やお菓子が散乱…再入院が決定した

自宅療養に移行後、私はIさん宅に通いました。自宅に帰って10日ほどがたったころ、訪問してみるといつもの状況とは違っていました。発汗多量、四肢の冷感が著明で、サチュレーションは80パーセントでした。

 

気道の吸引をしてもサチュレーションの改善はありません。Iさんの寝ているベッド上やその周囲は飲み物、食べかけのお寿司、ビスケットなどが散乱していました。

 

「またクリニックに入院しますか?」とIさんに問うと、Iさんは他人事のように淡々とうなずきました。

 

すぐ救急車で当院の病棟に搬送しました。入院後酸素吸入でサチュレーションは何とか安全域を維持できましたが、血液検査上は炎症反応が著明で、誤嚥性肺炎を疑い抗菌薬投与を開始しました。

 

しかし、炎症反応以上に肝障害が進行しており、栄養状態も急激に悪化していました。入院二日目、病状が少し落ち着いたIさんのベッドサイドで私はIさんに質問をしました。

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

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梶川 博、森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

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