相続税の審査請求の申請方法について
次に、相続税の調査に対しての審査請求の申請方法について、ご説明します。
審査請求は、複数の請求人が同じ事実の下で画一的に処理することを求める場合には、共同して審査請求を行うことができます。相続税の場合、相続人間に争いがなければ同一事実に基づき税務署から処分が下されますので、相続人共同で審査請求が可能です。
再調査の請求を行わずに最初から審査請求の申請も可能
税務署の処分への再審査の請求は、処分の通知を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内にしなければなりません。
再調査の請求の決定に納得できない場合には、決定後1ヵ月以内に国税不服審判所に審査請求ができます。
もし、審査請求の裁決にも納得できない場合には、原処分取消訴訟(地方裁判所への裁判)をすることになります。その場合には、裁決後6ヵ月以内に手続きをする必要があります。
申請期間は税務署の処分があってから3ヵ月以内
再調査の請求をする場合でも、審査請求をする場合であっても、処分の通知を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内に申請をしなければなりません。申請については、再審査請求については処分を下した税務署、審査請求は国税不服審判所に提出することになります。
審査請求の裁決は申請してから1年後
審査請求などをしても、すぐに裁決が下ることはありません。再調査の請求決定までの期間は、3ヵ月が目安です。
なお、3ヵ月を経過しても再調査の請求の決定がされない場合には、決定を待たずに審査請求をすることができます。
一方、審査請求の裁決までの目安の期間は1年です。審査請求も同様に、3ヵ月を経過しても裁決がされない場合には、原処分取消訴訟(地方裁判所への裁判)をすることできます。
再調査の請求・審査請求の申請状況と結果について
税務署の調査等に対しての、再調査の請求・審査請求の件数と結果についてご説明します。
再調査の請求の件数は、平成30年度は2,043件。
出所:平成30年度における再調査の請求の概要(国税庁)
審査請求の件数は、平成30年度で2,951件です。
出所:審査請求の状況(国税不服審判所)
再調査の請求・審査請求の内容が認められる件数は1割前後
再調査の請求及び審査請求の申請によって、申請内容が認められる割合は1割前後となっています。
平成30年度の再調査の請求の処理件数は2,150件ですが、申請者側の申請内容が認められた(一部認容も含む)件数は264件と、全体の申請件数の12.3%です。
一方、国税不服審判所が平成30年度に処理した2,923件のうち、申請者側の申請内容が認められた(一部認容を含む)件数は216件と、全体の7.4%です。
審査請求の裁決が裁判で覆るケースは存在する
審査請求の結果に納得できない場合には、裁判を起こすことも選択肢のひとつとなります。
審査請求の裁決は行政の結論ですが、裁判は司法が出す結論であり、裁判により税務署の処分が覆るケースは存在します。
近年で税務署の処分が覆った事例としては、外れ馬券の経費についての裁判がありました。
裁判を起こした場合には時間と弁護士費用が負担となる
裁判により審査請求の裁決が覆ることがありますが、税務署(行政)も裁判所の判決に不服があれば上訴します。
日本の裁判は、三審制(地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所)ですので、最高裁までもつれれば裁判が終結するまで、数年間かかります。
先ほど事例で出した外れ馬券の経費の裁判ですが、調査対象となった所得税の年分は平成17年から22年分です。平成22年分の申告期限は平成23年3月ですので、確定申告をしてから最終的な判決までに7年近くの歳月が経過しています。
また、審査請求は請求費用の負担は必要ありませんが、裁判では自ら弁護士選任し、裁判費用を負担しなければなりません。
裁判で勝訴すれば、余計に支払った税金は還付になりますが、敗訴すれば弁護士費用分が上乗せで支出となります。
審査請求以外にも更正請求書を提出する選択肢
税務署が更正処分をするのは、処分内容に自信がある場合のみです。
審査請求等で処分が覆る割合が1割前後ですので、簡単に申請が認められることはありません。
しかし、調査が行われていない部分で、新たな事実が発見された場合には更正の請求をすることが可能です。
更正の請求とは、新たな事実や計算間違いにより税金が還付になる場合に行う申請制度。更正の請求書は所轄署に提出し、税務署が請求内容を判断します。請求が認められなかった場合には、税務調査と同様に審査請求の対象となります。
相続税の申告は、特例適用や法令解釈の幅が広い税目です。調査の内容で争うことも大事ですが、もう一度相続税の申告書を見直すのも大事な作業となります。
その際、その申告書がご自身で作成したものや相続税専門でない税理士が作成したものだった場合は、相続税に詳しい税理士に相談した方が良いでしょう。
ご自身や相続税に詳しくない税理士が作成した申告書は、本来減額できるはずだった点を見落としているものも多いためです。