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軍用地とはどのような土地か
軍用地とは、日本に駐留している米軍基地や自衛隊の施設用地などをさします。これらの用地は国有地であることが大半ですが、沖縄県では過去の経緯から多くの民有地が充てられています。
戦後、沖縄県では米国の施政権のもとで民有地が大規模に接収され、軍事基地として使用されました。本土復帰後は国が地主から用地を借り上げる形態になり、地主に毎年借地料が支払われています。
一部で返還されるケースがあるものの、沖縄県では長期間にわたって多くの民有地が軍用地として使用されています。
終戦から70年以上、本土復帰からも半世紀近くが経過する中、地主の高齢化や相続で地主の数が増えることなどが問題になっています。
相続税の支払いのために軍用地が売りに出されることもあり、そのような軍用地を投資目的で購入する人もいます。
軍用地の相続税評価額の計算方法
軍用地の所有者が死亡した場合は相続人が相続します。相続した財産は相続税の課税対象になりますが、軍用地も他の財産と同じように相続税の課税対象になります。
固定資産税評価額をもとに評価
相続税を申告するときの軍用地の評価額は、固定資産税評価額に所定の倍率をかけて借主の権利(地上権)にあたる部分を差し引いて計算します。
軍用地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率×(1-40%)
・「倍率」は一般の土地とは異なり、軍用地向けの「公用地用の評価倍率表」を参照します。
・「40%」は相続税法第23条にもとづく公用地としての地上権割合です。地上権割合は存続期間に応じて定められていますが、軍用地の評価では存続期間の定めがないものとして40%となります。
軍用地の相続税評価の具体的な手順
軍用地の相続税評価額は次の手順で計算します。
1.固定資産税評価額を調べる
2.公用地用の評価倍率表で倍率を調べる
3.算式に当てはめて相続税評価額を求める
これから下記の設例をもとに軍用地の相続税評価額の計算方法をご紹介します。
【例】土地Aの所在地、使用している施設名、登記簿上の地目は以下のとおりとします。
所在地:沖縄市
施設名:嘉手納飛行場
登記簿上の地目:畑
■固定資産税評価額を調べる
固定資産税評価額は、毎年4月頃に送付される固定資産税の課税明細書に記載されています。課税明細書が手元にない場合は、市町村役場で固定資産評価証明書を発行してもらうことができます。
課税明細書の様式は市町村によって異なりますが、「評価額」の欄を参照します。
土地Aについては、固定資産税評価額は1,000万円であると仮定します。
■公用地用の評価倍率表で倍率を調べる
公用地用の評価倍率表は国税庁の路線価図・評価倍率表のホームページから確認できます。トップページの地図またはリストから「沖縄県」を選択します。
次の画面で「雑種地の評価(公用地用の評価倍率表を含む)」を選択すると、公用地用の評価倍率表がダウンロードされます。
所在地(市町村)、施設名、地目に応じて公用地用の評価倍率表で倍率を確認します。地目は登記簿上の地目を適用します。現況と登記簿上の地目が異なることもあるため注意が必要です。土地Aの場合は「沖縄市」の「嘉手納飛行場」の「畑」の欄を参照すると、倍率が4.1倍(令和3年分)であることがわかります。
■算式に当てはめて相続税評価額を求める
ここまでの過程で得られた固定資産税評価額(1,000万円)と倍率(4.1倍)から相続税評価額を計算します。
前出の軍用地の相続税評価額の算式に当てはめると、土地Aの相続税評価額は以下のように計算されます。
■売買価格と相続税評価額は大きく異なる
参考までに、軍用地が売買されるときの価格の算定方法をご紹介します。
軍用地の売買価格は、国から支払われる年間の借地料に所定の倍率をかけて計算します。売買価格を求めるときの倍率は、相続税評価に使う倍率とは異なるものなので注意してください。倍率は場所によって異なりますが、おおむね40~60倍の範囲で設定されています。
たとえば年間の借地料が150万円で倍率が40倍である軍用地は6,000万円で取引されることになります。
軍用地の売買価格は相続税評価額より大幅に高くなることが一般的です。
売買価格と相続税評価額の違いから相続人どうしでトラブルになることもあるため、専門家によるアドバイスが欠かせません。
軍用地の相続には専門家のアドバイスが必要
以上、沖縄県の軍用地の相続税評価についてご紹介しました。
軍用地の相続は沖縄県特有の事項ですが、県外にも経験豊富な税理士がいます。軍用地の相続税評価や申告については、県の内外を問わず実績のある税理士に相談することをおすすめします。
また、売買価格と相続税評価に乖離があることから、相続人同士の争いの元になる可能性もあります。税理士や弁護士といった専門家のアドバイスを受けながら相続を進めていった方が良いでしょう。