(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、行き過ぎた「相続税対策」に課税当局から待ったをかけられるケースが増えています。ここでは「タワマン節税にはご注意を」をテーマとし、辻・本郷税理士法人の山口拓也氏が事例と共に解説していきます。

「相続税を減らすため買った」とされ課税されたケース

小規模宅地等の特例は、平成30年に改正されました。平成30年4月1日以後のものについては、特に賃貸物件の場合、購入から3年が経過していないと特例が使えないことになりました。相続が発生する直前の相続税を減らす目的でのタワーマンションなど賃貸物件購入を防止することが趣旨だと思われます。

 

実際の裁決事例として、平成29年5月の裁決をご紹介します。

 

それまでは賃貸物件については、亡くなったあとしばらく売却しなければ税務調査の対象となる心配はあまりありませんでした。売却すると税務調査で課税される可能性が高くなったのは、時価が見えるようになるためです。

 

さて、この事例で相続が発生したのは平成24年6月で、平成21年1月に甲不動産を、平成21年12月に乙不動産を購入していました。

 

不動産相続税評価と時価とのバランスは、甲不動産が4.18倍、乙不動産が3.85倍だったので、4倍くらいの時価と相続税の差があったわけです。1億円のものが2500万円、というイメージです。

 

相続発生後、この2つの物件のうち乙不動産だけが25年3月に売却されました。

 

その結果、乙不動産は時価がみえるので、これに対して総則6項が使われて、時価課税されました。そこは納得がいきやすいかと思うのですが、このケースでは売却していない甲不動産についても時価で課税される裁決となりました。

 

売却していなくても、租税回避を目的とした物件の取得は総則6項で課税される可能性が出てきたのです。

 

平成24年の相続で、購入したのは平成21年、亡くなる直前ということになり、課税当局からすると引っ掛かる要素になるようです。

 

その裁決のなかでは、納税者の方は投資目的だったとか、生活のためだったと主張されていたそうですが、最終的に審判所は、やはり相続税を減らすために買ったものと認定し、時価に対して課税を行いました。

 

近年、行き過ぎた節税に対して、課税当局から待ったをかけるケースをちらほら聞いておりますので、亡くなる直前に慌てて対策をすることがないよう、ぜひ計画的に対策をしていただければと思います。

 

 

■動画でわかる「『行き過ぎ』な相続節税にご注意を!【タワマン節税】」

 

 

辻・本郷税理士法人 シニアパートナー 税理士

山口 拓也

 

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