(※写真はイメージです/PIXTA)

成人の8人に1人が腎臓病であるとされていますが、健康診断で「腎臓の数値が悪いですよ」と言われてピンとくる方はどれほどいるでしょうか。ここでは、生活習慣病や腎臓病患者の実態を、腎臓内科医・南青山内科クリニック院長の鈴木孝子氏が解説していきます。

「腎臓の機能は?」あまり知られていないが…

このように現代日本においては、豊かになった食生活や運動不足、そしてストレスなどもあいまって生活習慣病を発症し、透析に至ってしまう患者数が増え続けているのです。

 

透析の導入年齢や患者の平均年齢も年々、上昇傾向にあります。導入年齢平均は1985年で54.4歳、2019年で70.42歳。患者全体の平均年齢も1985年で50.3歳だったのに対し、2019年では69.09歳となっており、約19歳も高齢化しています。

 

これは、透析に至るまでの薬物治療などが発達した裏返しともいえます。つまり、昔は今ほど良い薬がなく、腎機能の低下が早く進んでしまったために、透析も若いうちから導入せざるを得なかったのですが、今は病状のコントロールが良好になり、透析の導入も遅らせることができているということです。

 

透析は腎臓の残存機能が健常時の10%になったときを目安に導入されます。CKDにおいては、できるだけ腎機能の低下を遅らせ、できるだけ長期間、残存機能を保つことが治療目標となっていますから、透析の導入年齢や患者平均年齢の高齢化は当然の流れといえます。

 

「腎臓の数値が悪いですよ」

 

今、透析中の人も、透析は未導入であるもののCKDの治療中、という人も、先天性で明らかな症状が出ている場合を除き、最初は健康診断などで、こんなふうに指摘を受けた経験をおもちだと思います。

 

しかし、数値が悪いといわれてもいまひとつピンとこない人が多いようです。私も長年、たくさんの患者さんと接してきましたが、それは大変だとすぐ深刻に受け止める方にはなかなかお目にかかれない、というのが正直なところです。

 

胃や腸、肺などと比べると、腎臓は体でどんな役割を果たしているのか、一般にはあまりよく知られていないように思います。「おしっこをつくるところでしょ?」くらいはすぐ出てくるかもしれませんが、ほかにも、なくては困るとても重要な働きをしているのです。

 

例えば市民講座などで「いったん不要物とされた物質から、体内で利用できるものを再吸収する働きもあるんですよ」と話すと、それは知らなかった、と意外な表情を見せる方がたくさんいます。

 

専門医のひいき目もあるかもしれませんが、「肝腎かなめ」という言葉もあるのに、腎臓はいまひとつ、知名度が低いと思われます。

 

 

鈴木 孝子

南青山内科クリニック 院長 

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    ※本連載は、鈴木孝子氏の著書『「生涯現役」をかなえる在宅透析』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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