(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の母が亡くなり、実家を整理していたところ、母が書いた遺言書が見つかりました。印鑑や日付など遺言書として必要な要素はそろっていたのですが、その本文は「消えるボールペン」で書かれていました。果たしてこの遺言書は有効なのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が、実例をもとにわかりやすく解説します。

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「消えるボールペン」で書かれていた遺言書

今回の相談者は、50代の会社員の鈴木さんです。高齢の母親が亡くなったあと、実家の仏壇を整理していたところ、母親が書いた遺言書が見つかったそうです。

 

「先日、片付けのために実家に寄ったんです。仏間を掃除していて、なんとなく仏壇の引き出しを開けたら、お数珠の下に見慣れない封筒があって。中を見たら、一回り小さい封書に、母の字で『遺言書』と…」

 

しかし、遺言書を手に取った鈴木さんはハッとしました。なぜなら、個性的な明るい紺色のインクは、鈴木さんが以前、母親に譲ったボールペンのものだったからです。

 

「お母さんの好きな色でしょ? しかもね、このボールペン、こすると消えるのよ!」

「あらー、それは便利! ありがとう」

 

鈴木さんの母親が残した遺言書は、いわゆる「消えるボールペン」で書かれたものでした。

 

「先生、消えるボールペンで書かれた遺言書は、やっぱり無効ですよね…?」

遺言書の作成において、筆記用具の指定はない

結論からいえば、家庭裁判所で検認を経れば、有効な遺言となります。

 

法律上、遺言を書く筆記具に指定があるわけではないため、消えるボールペンでも、家庭裁判所での検認の手続きを経れば有効となるのです。

 

しかし、こすれば(熱を加えれば)消えてしまう可能性があるわけですから、早急に検認の手続きを申し立てる必要があるでしょう。

 

鉛筆などの「文字が消えるもの」は、内容を改ざんされるリスクがあるため、これから遺言を作成する方は、使用を避けるべきです。また、今回のような消えるボールペンは、その性質から長期保管には適しません。鉛筆同様、遺言書作成への利用は絶対にしないでください。

 

※本件は業務上の経験と個人的な見解とに基づき記載しておりますので、内容の正確性、法的整合性等ついては一切の保証をできかねます。各相続のケースでは各専門家の指導の下、個別具体的な判断お願い致します。

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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