(※写真はイメージです/PIXTA)

数ヵ月前に亡くなった父親の遺品整理をしていると、愛用のパソコンのなかに遺言書のファイルを発見。果たして有効なのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が、実例をもとにわかりやすく解説します。

【関連記事】孤独死した兄のマンション、転がり込んだ弟も孤独死…相続登記の放置が招いた「解決困難な問題」

元経理マンの父、Wordファイルに緻密な遺言書を残す

今回の相談者は50代男性の遠藤さんです。数ヵ月前に亡くなった父親の遺品を整理していたところ、遺言書を発見したそうです。

 

「父の遺言書は、父愛用のパソコンの中にWordファイルとして保存されていました。経理畑の長かった父らしく、すごく几帳面に記されていて、最後には残された家族ひとりひとりへの感謝の言葉もつづられていました。寡黙で不器用な父が、こんなにも家族を思っていたのかと考えると、もう…」

 

こぶしで涙をぬぐう遠藤さん。

 

以前、遺言書にもパソコンが利用できるようになったとの話を聞いた記憶があったことから、今回発見した父親の遺言書も有効なものと信じ込んでいました。ところが、知り合いにそれを話したところ「本当に大丈夫なの?」といぶかしがられ、不安になったそうです。

 

「パソコンを利用した自筆証書遺言の作成が有効になったと聞いたのですが、先生のところで、この遺言書をもとに相続登記してもらうことは可能ですか?」

 

遠藤さんは、父親の書斎から持ち出したという古めかしいノートパソコンを、筆者の事務所の机にドーンと置きました。

パソコンによる作成が認められるのは「財産目録」のみ

残念ですが、パソコンで作成した遺言書は無効と考えられます。

 

2019年1月施行の法改正により、パソコンや登記簿謄本などの添付により遺言を作成することが認められましたが、それは「財産目録」についてのみとなります。

 

自筆証書遺言書の本文は、自筆によるものでなければ、残念ながら遺言書全体が無効となってしまいます。

 

そのように告げると、遠藤さんはがっくりと肩を落とし、大きなノートパソコンをカバンにしまうと静かにお帰りになりました。

 

※本件業務上の経験と個人的な見解とに基づき記載しておりますので、内容の正確性、法的整合性等ついては一切の保証をできかねます。各相続のケースでは各専門家の指導の下、個別具体的な判断お願い致します。

 

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録