(※写真はイメージです/PIXTA)

相続発生時、親の借金を子が相続放棄すると、相続関係が変化して別の親族に返済義務が生じることがあります。それに気づかず一方的に手続きをしてしまうと、あとから親族間に深刻なトラブルを引き起こすことになるため、注意が必要です。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が、実例をもとにわかりやすく解説します。

子どもが相続放棄したら、親きょうだいが相続人に

亡くなった人のひとり息子(娘)が相続を放棄した場合、その息子(娘)ははじめから相続人ではなかったことなります。すると、相続人の両親は「子どもがいない夫婦」と同じ相続関係になります。その結果、亡くなった人の両親(子どもから見た祖父母)が存命だったら、その人が相続人となります。また、すでに両親がない場合で、きょうだい(子どもから見たおじおば)がいる場合は、その人が相続人になります。

 

① 亡くなった方に妻とひとり息子(娘)がいる場合

  (亡くなった方)父=母(相続人)

           |

           子(相続人)

 

②ひとり息子(娘)が相続放棄した場合

  (亡くなった方)父=母(相続人) 

           |

           子(相続放棄→はじめから相続人でないことになる)

 

ひとり息子(娘)が相続放棄した結果

亡くなった父の妻(相続放棄した息子・娘から見た母親)だけでなく、亡くなった父の尊属(祖父・祖母)やきょうだいが存命の場合、その方たちも相続人となります。

 

Aさんの場合はすでに母と祖父母が亡くなっているため、子どもであるAさんが相続放棄することで、相続関係に変化が生じ、叔父たちが相続人の立場になってしまったのです。

 

こうした場合、前もって親戚に連絡し、協力して相続放棄の手続きを行うべきでしょう。先順位で相続放棄をした人の手続きが終り次第、すべての相続人が順々に相続放棄をしていくことが必要です。

 

また、「相続分の放棄」と「相続放棄」について混同している方も少なくありません。そのような方々は、「亡くなった方の遺産を一切受け取らないという遺産分割協議書に実印で捺印したから、自分は一切相続と関係ない」とお考えになっているようですが、そこも注意が必要です。

 

「相続分の放棄」と「相続放棄」とのいちばんの違いは、「相続分の放棄」は相続分がなくても「相続人」であることには変わりがないため、借金などの負債から逃れることができない、という点です。

 

一切のリスクなく相続と無関係になりたければ、現在の日本の法制度上、家庭裁判所での「相続放棄」しか方法がないのです。

 

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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