「失踪宣告の申立」すべきケースとは
10年以上にもわたって連絡が取れないといった今回のような場合は「失踪宣告の申立」をするべきケースだ思われる。そのため、山本さんにはそのようにアドバイスをしたところ、後日、山本さんの父親は失踪宣告の申立を決意されたという。
失踪宣告については、裁判所のウェブサイトで下記のように解説してある。
(裁判所ウェブサイト、失踪宣告)
具体的な手続きの流れはこうだ。
まず、相続の利害関係者である依頼者の父親が司法書士事務所等に依頼し、昭雄さんの相続で必要になる「相続関係を示す一連の戸籍」のなかから、相続人である晴彦さんの現在戸籍を取得する。
各戸籍には住所情報が紐づけられている「附票」というものがあるので、こちらを取得し、晴彦さんが現在住んでいると想定される住所へ連絡を入れる。
返事があれば協力をお願いすることができるが、もし返事が来なかった場合は、それ以上捜索することが困難になってしまう。このときに初めて「失踪宣告」の申し立てをすることを考慮するのだ。
「人を死亡とみなす」大きな事件のため、慎重に考慮を
今回のケースでは、10年以上だれも連絡をとっていない、会っていないことを考えると、民法上の失踪宣告に該当する事案であると考えられる。
ちなみに、失踪宣告の申立書の書式と記載例は裁判所のウェブサイトの掲載されているので、参照されたい。
●家事審判申立書 事件名(失踪宣告)
この申立てのために集める書類や、裁判所に提出する書類は膨大であり、なおかつ、かなりの時間を要する手続きであることを鑑みると、司法書士や弁護士に依頼するのが確実であるといえよう。
申立て手続きが完了すると、裁判所から失踪を証明する確定証明書を発行することができるようになる。確定証明書は、該当の方の戸籍がある管轄の市区町村役場に10日以内に提出する必要がある。
提出から1週間程で「死亡とみなす」記載がある戸籍を発行することが可能となり、相続を証する書面としてほかと変わりなく使用できる。
ほかにも、家庭裁判所に不在者財産管理人を申し立てる方法もあるが、連絡が取れなくなって明らかに死亡している可能性が高い場合は、失踪宣告が実態に近いと思われる。
今回の事例の場合だと、ここまでの手続きが完了すれば、昭雄さんの相続は相談者である山本さんの父親が相続人として相続を取りまとめられることになる。
ただし、失踪宣告は人を死亡とみなしてしまう大きな事件になるため、ぜひ一度専門家に相談することをお勧めする。
近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士
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