(※写真はイメージです/PIXTA)

今回は、賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、周辺土地の再開発を理由とした借家の立退き事例について紹介します。※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

【参考事例】周辺土地の再開発を理由とした立退き

そこで、今回は、周辺土地の再開発を理由とした立退きに関する一つの参考事例として東京地方裁判所平成9年9月29日判決の事例を紹介します。

 

この裁判例の事例は、冒頭の設例の事例とほぼ同じ事案です。

 

この事案では、賃借人側も退去自体を大きく争ったわけではなく、もっぱら立退料の金額を中心として争いとなりました。

 

この事案において、裁判所は以下の通り判示して、賃料の約125か月分の立退料の支払いと引き換えに、立退きを認めました。

 

1.賃借人は、本件建物において既に約30年間にわたり営業をしてきたが、本件建物の老朽化は相当進行しており、外壁モルタルの剥離や建物全体の倒壊というような不測の事態の発生も予想される状況となっていること

2.本件建物の敷地である本件土地の平成九年における更地価額は約6000万円であること

3.賃借人の本件建物における年間売上げは約3600万円であること

4.本件建物の賃料は現在月額335000円と低廉であること

5.賃貸人は、本件解約申入れの正当事由を補完するための立退料として、2900万円又は裁判所が相当と認める金員の提供を申出ていること

→その他本件に現れた諸般の事情を総合すると、本件解約申入れの正当事由を補完するための立退料としては、4200万円が相当である。

なお、右認定の立退料の額は、原告が提供を申し出た額(2900万円)を上回るものであるが、原告は本件再開発計画を実現する強い意向を有していること及び弁論の全趣旨に照らせば、右の認定の金額は、原告の提示額と著しい差異を生じない範囲にあり、かつ、原告の意思にも反しないものと認められる。

 

以上の通り、裁判所はいくつかの理由を示して立退料の金額を算出しましたが、具体的な計算方法などが示されたわけではありません。

 

もっとも、賃料の10年分以上が立退料として命じられている、という点において一つの参考事例となります。

 

 

北村 亮典

弁護士

こすぎ法律事務所

 

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